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第15話 ※攻め視点
宮坂に2度目の告白も先を越されたあの日から1ヶ月が過ぎた。
あの日部屋を訪れた宮坂に、今度こそ俺から告白するつもりだったのに、思いを告げ終える前に宮坂の涙に言葉を止めてしまった。
すぐりの代わりだと思って付き合っていた。この数日だけで何度宮坂の涙を見ただろう。
宮坂の求める手は俺のものでは無いのだと知りながら、泣き崩れる宮坂の背を撫でた。
そう思っていたのに、宮坂はどうやら本当に俺のことを好きらしく、勘違いを解きあって色んな話をして、本当の恋人として付き合うことになった。
しかし、春休みに入って実家に帰省し新年度になってもなんだかんだと忙しく、俺たちはまだデートすらまともに出来ていない。
新年度に入って、俺は親衛隊を辞めたが、宮坂は「みんなとの繋がりは大切にしたいから」と未だに隊員を続けている。
あの日キスまでして、恋人になったのが夢だったんじゃないかと思うくらいだ。
それでも今日、ようやく宮坂とまる1日一緒に過ごせる日を迎えた。
端的に言うと、最高だった。
待ち合わせは午前9時、お互い寮から向かうがあえての駅前集合だ。
めったに見れない宮坂の私服、襟付き白シャツに黒セーターを重ね着し、パンツは柔らかそうな生地の細身のチェック柄スラックス。萌え袖気味になっていて宮坂の可愛さを引き立てていた。
「宮坂、こっち。」
歩いてくる宮坂を見つけて声をかければ、こわばった顔でこちらを見つめた。
困ったように微笑んでそばに来た。可愛い。
「ごめんなさい、待った?」
いつもと状況が違うからか、どこか緊張気味の宮坂ににやけが止まらない。
「いや、行こうか。」
それからの1日、俺はひたすらに可愛い宮坂を堪能した。
いるかを見つめるキラキラの横顔(可愛い)。
クレープを頬張る幸せそうな顔(愛しい)。
アザラシの動きを真似る茶目っ気(これ以上好きにさせないで欲しい)。
ショップでシロクマのぬいぐるみとアザラシのぬいぐるみを見比べ悩むところ(結局アザラシを俺からプレゼントした)。
帰る頃には宮坂の緊張も解けて、お互いべったりだった。
「宮坂、この後部屋来なよ。」
当然来るものだと、そう声をかけたら、何故か宮坂は残念そうに微笑んだ。
「…うん」
何かまずかっただろうかと、不安になって問いかける。
「どうした?嫌だった?」
そっと抱き寄せながら耳元で言うと、宮坂は逡巡の末に呟いた。
「…あの、ね、さとって呼んで欲しいな。」
可愛いすぎてその場でキスをした。
「んっ、ふじ、くんっ!」
そっと唇を話すと、怒っているのに何故か嬉しそうで、たまらない。
キスの後の顔も、名前を呼んだ時の嬉しそうな雰囲気も、俺しか知らない宮坂だ。
すぐりの話をしているときの凛々しさとは違う、俺だけの宮坂だ。
今日みたいにふたりの時間を重ねてもっと知って行きたい。いつまでも。
「好きだよ、さと。」
end
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