81 / 118

十一章 ハッピー・ホワイトデー

 必要最小限の家具類、雑貨類しか置いていなかった駿佑のマンションは、聖が出入りするようになってからグリーンで覆われていった。 「キッチンには調理用具がたくさんあるのに、緑を置かないなんて」  これが、聖の言い分だ。  聖が遊びに来た時に、美味しい料理を食べさせようと、調理用具だけは充実させておいた駿佑だった。 「植物は手入れが大変だから、苦手なんだ」 「僕が世話をしますから、大丈夫ですよ」  グリーンに水をやる聖に、ふと駿佑が声をかけた。 「そういえば、明後日は3月14日だ。聖、何か欲しいものはないか?」 「覚えててくれたんですか!?」  2月14日のバレンタインデーには、聖の手作りトリュフを贈られた駿佑だ。  お返しのホワイトデーを、忘れたことはなかった。  最近は、組の事務所への出入りが多く、なかなか会える機会の少なくなってしまった駿佑に、聖は素直なところを口にした。 「僕、駿佑さんが欲しいです。丸一日、駿佑さんを独り占めしたいです」 「可愛いことを言ってくれる」  駿佑は、水差しを持つ聖を背中から抱いた。 「解った。3月14日は、予定は入れない。聖だけの私になろう」 「やったぁ!」  じゃあ、一緒に行きたいところがあるんです、と聖は言った。

ともだちにシェアしよう!