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第十一章・3
「どれがいい? 聖の好きな蘭を選べ」
「一つに絞るのが、難しいですね」
しばらく、ああでもない、こうでもない、と頭をひねっていた聖だったが、最後に駿佑の方を見た。
「駿佑さん、好きなものを選んでください」
「私が、か?」
「僕にプレゼントしてくれるなら、どの蘭を選びますか?」
そうだな、と駿佑は蘭を眺めやった。
「これだな」
それは色とりどりの蘭の中で、ひとつだけ静かな空間を作っている白い胡蝶蘭だった。
「こ、こんな高価なもの!」
「好きなものを、と言ったじゃないか」
それに。
「君にぴったりの花だ、聖」
「え……」
聖が照れてもじもじしている間に、駿佑は会計を済ませてしまった。
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