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第28話 級友との再会

今日は社で開催している絵画展に、 学校団体の見学が入っている。 一応主催者として、 顔を出して挨拶する事になった。 今日は要君もここに出向している。 「先輩、若い子続続ですね。 ウハウハしないで下さいね!」 最近、要君は言うようになった。 何かと僕にたきつけて来る。 「何そのウハウハって…… 要君の方がちょっとオヤジ化してきてない?」 「いや先輩、 僕この前陽ちゃんの三者面談に行ったんですけど、 今どきの子供って違いますよ! 中学生なのに、中には何処のオジさん? ってのが居るんですよ。 かと思えば小学生?ってのも居るんですけどね。 でも、大人びてる子は大人びてますよね。 親子ほど年が離れてる先輩と並んでも、 全然見劣りしませんよ?」 「それ、どういう意味? 僕が年だって?」 そう言うと要君はハハハと笑って、 「先輩、先輩の番って、もしかしてず~っと年下って事も…… あるかもですよ? 下手をすると、まだ生まれてないかも?って意味ですよ!」 と冗談のようにしていった。 僕に取ってそのセリフは心臓発作ものだ。 もしかして要君は知ってる……? イヤイヤ、そんな事、おくびにも出して無いから、 きっと未だにシングルな僕をからかっているだけだ…… 要君をじろっとにらむと、 「ハハハ、先輩って若く見えるから二十歳くらいに見えますよ!」 と笑いながらそう言ったので、 「じゃあ、陽一君…… 僕に頂戴?」 と言ってみると、 「どうぞ、どうぞ、熨斗を付けてお渡ししますよ? でも、高校卒業するまで待っていて下さいね」 ときた。 全く、冗談か本心か分からない。 「お~ そう来たか! じゃあ、陽一君が高校を卒業したら、 僕がもらってあげよう! あ~ でも陽一君にも選ぶ権利はあるからな~」 そう返すと、 「先輩、大丈夫ですよ。 陽ちゃん、ちっちゃい時から先輩の事大好きですから! 只…… 佐々木先輩からひっぺがえすのはちょっと大変かも!」 と言ってクスッと笑った。 でもそのあと要君は鼻歌を歌いながら 今日の準備をしていたので、 おそらく冗談と取ったのだろう。 こういう冗談がまだ言い合えるから 僕は大丈夫! そう自分に言い聞かせた。 開館のベルと共に、 第一団体の中学生たちがやって来た。 都内にある中学校で美術の授業の一環として、 美術の先生に引率されてやって来た。 要君の言うように確かに男子は随分体格が良くなっている。 高校生と言っても分からないくらいだ。 それに女子も下手をすると未成年だとは分からない子もいる。 「おはようございます~ 今日はうるさいと思いますがよろしくお願い致します~」 そう言って引率の先生が挨拶にやって来てくれた。 「あれ? 君…… 大久保さん?」 引率の先生は僕のクラスメイトに似ていた。 だから思わず尋ねてみた。 「え? あ~! 矢野君!」 やっぱり彼女だった。 引率できた先生は僕の高校時代のクラスメイトで、 美術部の仲間だった。 と言う事は、要君にとってのクラブの先輩だ。 「要君! 要君! チョット来て~!」 「え? 要君って矢野君の秘蔵っ子だった?」 大久保さんが驚いた様にして僕に尋ねた。 「先輩! どうしたんですか? なにかミスがありましたか?」 と、丁度やって来た要君とご対面してもらった。 「ちょっと待って! 赤城君? 本当に赤城要君?」 「え? あ~っ! 大久保先輩!」 「久しぶりだね~ え? もう何年会ってない? 最後にちゃんと挨拶したのって私達の卒業式だよね。 ウワ~ 15年? 年を感じるよね~」 「先輩、中学校の先生になったんですか?」 「そうよ~ 美術教師! もう中学生なんて生意気で大変よ~」 「ハハハ、そう言う年ですもんね~ 第3次反抗期かってくらい! 秘密も多いし!」 「ハハハ! 赤城君、分かってるじゃない!」 「そりゃそうだよ、要君、 中学生の息子が居るからね~」 僕がそう言うと、大久保さんは思った様にびっくりしていた。 「え~! 赤城君、もうそんな大きな子が居るの? ちょっとまって! 一体何歳で産んだの?」 「へへへ~ ま~、そこはあまり、 突っ込まないで置いてもらえると助かります~」 「びっくりしないでね? 要君の旦那さん、誰だと思う?」 「え? 旦那さんってじゃあ、赤城君ってΩだったの?」 「へへへ お恥ずかしながら……」 「な~に言ってるの! 今ではかの時の人、佐々木裕也のおかげで、 大分住みやすくなったでしょう? 堂々と自分はΩだって言えるようになったもんね~ 佐々木~ 何かやらかすやつだとは思ってたけど、 あの時は凄かったわよね!」 彼女が裕也をべた褒めすると、 要君は嬉しそうにしていた。 「実はね、その佐々木裕也が要君の旦那さんなんだよ~」 僕がそう言うと、大久保さんは、館内に響くような声で、 「え~~~~~っっっっっ!」 と仰天していた。 「ちょっと、ちょっと、どうやってあの完璧男を落としたのよ? 矢野君もそうだったけど、佐々木君も誰にも落ちないモテ男だったわよね。 うわ~ 息子が居るって事は、やっぱり、やることはやってたのね~ 想像出来ないわ…… 高校生の時は周りに何時も誰かいたけど、 女の影なんてなかったもんね~ まあ、婚約者があの優香女王様だったらね~…… ん? ちょっと待って、赤城君と結婚したって事は、 優香女王様とは破談になったんだよね? うわ~ いい気味! ところで優香女王様、今な何やってんの?」 「ハハハ~ 大久保先輩相変わらずですね~ でも僕も佐々木先輩も、 長瀬先輩はどうしてるのか全然知らないんです。 佐々木先輩、家族の縁を切ってるから……」 「ひゃ~ そうだったんだね~ そりゃそうか~ でないとΩの改正法何て作らないよね~ は~ 愛だね~ 全ては愛する赤城君の為か~ 私も早く誰か見つけたいわ~」 「先輩はまだ結婚して無いんですか?」 「それがね~ 良い人いないのよね! 職場は殆ど既婚者だし、 周りは子供ばっか…… 出会いも無いしね~」 「でも今どきの中学生は凄く大人びてるから、 男子生徒から告白とか無いですか?」 要君のその質問に、僕の耳はピクッとしたように 2人の会話に聞き入った。 「赤城君はどう思う? あると思う?」 「そうですね~ 僕はあるんじゃないかと思いますね~」 “え? 要君はそこまで抵抗ない?” 「それがね、そうなのよ! びっくりよね。 多いわけじゃ無いんだけど、 必ず一年に一度はあるわね~ 恐ろしヤングパワーね。 まあ、あの年頃って大人の魅力にやられる年だからね~ 勘違いしちゃうのよね。 大きな声では言えないけど、 実を言うと前にね、 男性教員が女性徒と恋仲になったのよ。 あり得ないよね。 29歳と15歳だよ?」 “え? やっぱりそう言うことあるの?” 「で? その二人、どうなったんですか?」 僕の意識は更に彼らの会話に傾いて行った。 「でね、幸い、学校側にはバレなかったから続いてたんだけど、 その子が高校に上がったら……それまでだったわね。 男性教員の方は彼女が高校を卒業したら…… みたいな感じで真剣に考えてたみたいだけど、 直ぐに高校で新しい同じ年の彼氏見つけたらしいわよ。 やっぱり、狭い世界しか見てないと、 そこに居る大人の男性が良く見えるのかね~」 そう大久保さんが言ったので、僕はガクッと来た。 やっぱりそう来るか…… 予想はしてたけど、 実際に聞くと、やっぱり気落ちしてしまう。 やっぱり年の差恋愛は無謀なのだろうか? まあ、その前に両思いにならないと番も何も無いんだけど…… 陽一君は僕の事をどう思っているんだろう? お父さんの親友なのだろうか? かなちゃんの先輩なのだろうか? せめて、僕は少しでも陽一君にとって ナイトでいた事があるのだろうか? 少しでも僕にドキッとしたりとか、 大人のαの男の魅力を感じてくれたことがあるんだろうか? でも僕は要君の次の質問に少しの期待を募らせた。 「先輩、その二人ってαとΩだったんですか?」

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