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第43話 やっぱりだった
「ねえかなちゃん?」
僕は夕食の準備の手伝いをしながら
かなちゃんに話しかけた。
「何? なんだか浮かない顔してるね?
矢野先輩と何かあったの?
最近先輩に会ってないもんね~」
かなちゃんがからかったようにして言った。
「え~! 何故矢野先輩がここで出てくるの~?
僕が元気ないと、かなちゃんってすぐに矢野先輩と結び付けたがるよね?」
僕がそう言うと、かなちゃんは明後日のほうを見ながら
「え~ そんな事ないよ~」
とごまかしたようにして言った。
「でもほら、この前みんなでお泊りしたときさ~
僕が自分の部屋に戻ってたのにはびっくりしたよ~
それよりも、陽ちゃんと木村君まで矢野先輩のところで
寝てた事には更にびっくりしたよ!」
今度は僕がごまかす番だった。
「ハハハ~ そういえばそんなこともあったね~
朝起きてきたお父さんの顔は見ものだったけど~
ハハハ……」
まあ、どんなに繕っても、
おそらくかなちゃんには僕が矢野先輩を好きなことはバレている。
そしてきっとお父さんにも、そしてあ~ちゃんにも……
今となっては今更で、
もうどうでもいいやといった感じだ。
“僕ってそんなわかりやすいなら、
何故肝心の矢野先輩には分からないかな?”
そう思っていると、
「矢野先輩の事じゃなっかたら……何?」
と聞き返されて、
「そうそう、ねえ、ポールが日本に来るって話、聞いてる?」
と尋ねた。
かなちゃんは涼しい顔して、
「そういえば、ジュリアちゃんが、
ポールのモデル事務所に所属してるみたいでね~
フランスでは割と有名らしいよ」
と言った。
「やっぱりそうだったんだ~
あのジュリアちゃんがモデルか~
まあ、ポールの事考えたら、
不思議ではないよね?」
「まあ、ポールは親の七光りって言ってたけど、
この前雑誌の写真見せてもらったら、
すごく綺麗になっててビックリしたよ。
小さい時からそうだったんだけど、
ジュリアちゃんってあまり日本人の血が入ってる様に見えないんだよね~
そうかというと、
完全なる白人にも見えないんだよね。
あれを完璧な創造物っていうんだろうね~
まだ9歳だったっけ?
ん? 10歳だったけ?
今度日本人のキッズモデルとコラボして、
ほら、何ていったっけ?
最近よく聞くインターナショナルキッズブランドの……
そのCMの撮影が日本であるって言ってたよ?」
ときたので、大我君のコラボの相手はジュリアだと確信した。
「それより、どうしてポールたちが日本に来るの知ってるの?
まだ言ってなかったと思うけど……
陽ちやんもポールと連絡とってたの?」
そう言ってかなちゃんがクルッと僕のほうを振り向いた。
「かなちゃん、包丁! 包丁!
危ないじゃない!」
かなちゃんは包丁の先を僕に向けてピンポイントしていた。
「あ~ ごめん、ごめん!
うっかりしてたよ。
で、何で知ってるの?
もしかして陽ちゃん……ジュリアちゃんと……!」
と今度は僕とジュリアの事を疑いだした。
「ちょっと待ってよ!
ジュリアは今10歳でしょ?
ジュリアとは何もないよ!」
そういうと、
「僕の目の届かないところで
ジュリアちゃんにちょっかい出したらだめだよ。
もう矢野先輩に顔向けできなくなるよ!」
とまた矢野先輩がらみだ。
何故ここで父親であるポールじゃないんだろう?
普通、女の子の親のほうを心配しないか?
それを何の関係もない矢野先輩って……
それちょっとおかしくない?
そうは思ったけど、話題を本題に変えて、
「違うよ! ジュリアにちょっかいって何!
僕を幼児に手を出す変態みたいに言わないで!」
といった後で、あれ?
これ……
反対にとると……
矢野先輩が僕にちょっかい出したら矢野先輩が……
あ、でも、僕の事好きでもなんでもなかったらそれはちょっと違うか?
あれ? あれ?
とちょっとこんがらがってきた。
かなちゃんは笑って、
「で? 僕の質問の続きは?
ジュリアちゃんでも、ポールでもなかったら、
何故彼らが来るの知ってるの?」
といつにもなく、しつこく聞いてきた。
「あ、そうそう、実をいうとこの前ね、
木村君の噂の君を覗き見にいったんだよ。
その時に、木村君も初めて知ったみたいなんだけど、
その子、大我君って言って、
キッズモデルしてるみたい。
街を歩いててスカウトされたんだって!
凄いよね!
で、こんどフランスから来るジュリアって子とコラボするって。
ジュリアののお父さんがすごい有名だったモデルのポールって言ってたから
もしかしてと思って……」
「あ~ そういうわけだったんだね~
それだったら多分そのジュリアで間違いないよ。
そうか、ポールの言ってたキッズモデルって木村君のαの君だったのか~
すごい偶然だね!
割とかっこいい子だって言ってたよ?
そっか~ そうか~
じゃあ僕も撮影見学に行けば木村君のαの君にあえるかな~
楽しみだな~」
とかなちゃんは割と呑気だ。
僕はこの情報を知ったとき、ジュリアと言う名前を聞いて、
結構緊張して心臓が跳ねたのを覚えている。
まさかここでポールとジュリアに会えるなんて……
そうか、ジュリアちゃんがモデルしてたから忙しかったんだ。
だから何年も日本にこれなかったんだ。
ポールといえば、僕とジュリアちゃんを、
すごく結婚させたがっていたのを記憶している。
そのたびにポールは良さんに怒られていた。
ポールはあれだったけど、
僕にとっても彼らは大好きな家族だった。
彼らの居場所はフランスでの僕の故郷だった。
最近は全然あってなかったし、
連絡も取っていなかったけど、
かなちゃんとは頻繁に連絡を取り合っていたみたいだ。
ポールとジュリアか……
僕は何だか荒れそうな気がして少し落ち着かなかった。
でもその予感は大いに外れて、
とんでもない方向へと荒れていった。
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