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初情詣サバイバー
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太陽の子、風の子、俺の恋人はとにかく元気だ。犬みたいな人懐こさで猫みたいにしなやか、犬みたいな愛嬌で、猫みたいに温かい。湯たんぽみたいだと思っていたが、今夜は俺が湯たんぽだった。
混むだろうか?混むだろうな。このあたりならあそこしかない。白い息で手先を洗う彼を抱き寄せる。迷わないようにだ、他意はない。邪-よこしま-な気持ちは捨てないと。彼が鼻を擤-か-んでから。
「ちょお寒み。あっためてぇ」
まだ俺たちもやってないのに、俺のコートの中で、俺の手は彼の手と強く抱き合って同衾-どうきん-する。まだ俺たちだって、やっていないのに……
「おまえ意外とあったかいんだな」
どうして今日だけ温かいのだろう?俺は彼のために存在している気がした。思い出した、カイロを持っている。彼の手が火傷しないように暫くは俺が持つし、俺が温めればいい。カイロの熱だけなんだ。俺の体温は低い。けれど熱い。彼と肌理-きめ-を合わせるたびに化学反応を起こしている気がする。俺が彼から熱をもらっている?
「ヤベ」
「どうした」
「多分5円玉ない!」
ああよかった。もう君に縁なんか要らない。俺が居るから。神社が創建されて朽ち果てるまでよりも長く、君には俺が。
「お前の5円玉と俺の5円玉が結婚して10円玉になったということで、いいだろう?」
「ん?えっ?どゆこと?」
「5+5は」
「10?」
可愛い俺の恋人。彼が怪我をしないように、病気もしないで、事故にも事件にも遭わないように。9円、彼。1円分だけ、浮気するなと、よそ見するなと、俺だけ見ていろと、別に疑っているわけではないけれど、俺のために祈らせろ。
「えっ、えっ5円玉って結婚すんの?1円玉が10回結婚したら?え?」
コートの中で彼の手を握り締める。放さない。俺が彼をしめ縄で繋いでしまう前に、俺をしめ縄で縛ってくれ。
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2021.1.1
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