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君とカーテンを買いにいく昼前
* * *
年下の恋人。抱き寄せるとき、少し肩に余裕ができる。俺より少し背が低い。まだ成長期にあると言うから可愛くて、いつでもどこでも寝てしまう彼を起こせなくて、料理もたくさん作り過ぎる。
牛乳、羊以外の肉、ヨーグルト、バナナ、チョコレート、オムライス、寿司も好きだったな。
嫌いなものはにんじん。グリーンピース、トマトと、ゴーヤ、しいたけ。
覚えている。何を作ったのかも覚えていて、君がどういう顔をして食べていたのかも、忘れるはずがない。
カーテンを買いに来たわけではないのに俺はカーテンの前に立ち尽くす。クリーム色の無地。このカーテンは俺の趣味ではなくて、彼も好きではないだろうな。
いいや、あの子はカーテンなんて気にしない。色も柄も、開いているのも閉まっているのも。俺が気にすればいいのだから。彼がいればそれだけで俺たちの家は華やかだった。
カーテンは要らない。だってすぐそばに太陽があったから。
買わないよ。要らないんだ。家具屋のデートは好きだけれど…
要らないのに俺の前には無情なカーテンが引かれて、嫌でも、現実と向き合わされる。開けなければあるいは夢を見ていられるのだろうか。
俺が月になったのか。俺が星空になったのか。俺が夜そのものになったみたいに、太陽であるはずの君は、こんな明るいうちから、おやすみのチッスもしないでネムッテシマッタ。
髪は乾かしたかい。目覚まし時計はセットしたかい。もう俺は起こしてやれないから。
ここでオヤスミとしか言えなくて、彼のおはようはもう聞けない。目を擦って、猫みたいに伸びる姿を俺は一生追うんだろうな。
この世界じゃ結婚とかはできなかったけれど、先に待っていて欲しい。長くは待たせない。ただ、君がいたこの世を惜しくも思うから、少しだけ待ってほしい。
小石みたいな指輪を嵌めて、ここで数秒の式を挙げる。天気は良いはずなのに、雨みたいに濡れていく。
* * *
相変わらずの年下ワンコ受けと年上スパダリ超絶美青年若干クール攻め想定。
2021.1.15
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