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白旗フレフレバレンタイン
原題「下心バレバレヴァレンタイン」
タイトル回収しきれていないため改題。
* * *
三ヶ日が終わると店はバレンタインとひな祭りのピンクとわずかに赤か水色でいっぱいになる。
俺には縁が遠いものと思っていた。ただピンク色と赤茶色、たまに赤だの青だのが目に入る。この時期はまだ、ひな祭りよりバレンタインが優勢か。板チョコレートが積み上げられて、箱と袋はとにかく種類が多い。
けれど用があるのはそこではなくて。
赤と青で迷っている。些細なことだが、些細なことで戸惑うようになった。彼には赤か?俺は青。彼曰く、暑苦しい赤、陰気な青。間違いなく俺は赤だよ。色の持つイメージなんて通り越して、彼に熱を上げている。赤鬼か青鬼か、紙のお面で立ち尽くしている。豆が食えればそれでいいのだろうけれど、彼はイベント事には全力だ。それなら俺も、混ざりたい。
「なぁなぁ、逆チョコやろ、逆チョコ」
彼が俺の背中に絡みつく。まだ節分も終わっていないよ。
「逆チョコあげて、気の利く男!モテるじゃん」
「モテてどうするんだ?」
俺がいるのに。分かってないな。違う、分かってほしい。これは遊びじゃない。
「モテてお前に勝つ!」
昨年のチョコレートのことを怒っているのか。いくらか安心した。俺が断らなかったから、妬いてくれている。俺は勝った負けただなんて認識はなかったのに……いや、ある。俺はいつでも負けている。勝てるはずがない。ぞっこん参って、白旗上げて降参している。彼は気付いてないみたいだ。彼に呑まれてきていることも、1年が意外と楽しいことで溢れていることも。
だって節分なんていつだか分からなかった。バレンタインもひな祭りも、ただのピンク色のオブジェ、他人事だった。
「作ろうか、チョコレート。今年は」
「お!マジか!でも……あれ?」
「まずは節分だろう?赤と青、どっちにする?」
チョコレートは甘めのやつがいいだろう。ケーキみたいに柔らかく作って、その口周りを汚すんだろう?
他の誰から貰ってもうるさくは言わないけれど、俺のが一番オモクテオオキイからな。
* * *
体液入れてそう。血とかな。血とか。
2021.1.22
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