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微分積分いい気分切ない分だけ豆を食う
※微妙に下ネタの陰
* * *
恋人のする下品な話は必ず元カレシの影がある。3人で同級生、それだけでなくてクラスメイト。向こうの浮ついた態度が原因で、この人はまったく意にも介さなくて、やがて痴話喧嘩に発展、そこに付け込んで恋人にした。もし仲直りしていたなら、俺には見向きもしてくれなかったのか?
俺のかわいい恋人は恵方巻きに対しての卑猥な妄想を嬉々として話している。そういう子供みたいなところがあって、内容は思春期。あまり恋人同士という自覚がないみたいだ。俺は相槌を打ってぼりぼりと豆を食う。
結局妄想なのだろう?俺たちの関係は、それを現実にできるけれど。
俺の手から豆の袋を持っていて、歳の数なんて気にせず口に流し込む。彼に噛まれているんだな、そういう音が後からやってくる。些細な挙動が少し野生的で何かエネルギーを持て余している。
「欲求不満なのか」
恵方巻きを比喩したその猥談は、俺たちがまるきり部外者で他人事というものではないし、俺は彼と、そういうことも視野に入れている。焦ったりはしないと決めている。無理強いも絶対しない。大切にする。でもいずれは……
舌で豆を転がした。飴玉みたいに。
「なんで?違うけど」
驚いたように目を丸くして、それはそれで俺の肩身がいくらか狭くなる。歯が、豆を砕いた。
「したいのかと思った。そういうことを……」
つまんでいた豆のおまけの鬼のお面を彼は顔に付けてしまった。大きな目だけ、穴から見える。俺を見てはくれなかった。
「なぁ、豆まきやろ!オレ鬼役やるからさ、思っきし投げて」
歳の数以上、袋から豆が消えている。雅やかな文化、広告会社の陰謀、何でもいい。くだらないものに一喜一憂している。小悪魔ほど色気はないが、子鬼程度に可愛らしい。
「いけないな」
「え?」
「鬼は外に追い出されるんだろう。お前は中で、ずっと俺の傍にいてくれ」
イワシの飾りも一応置いてみたが、この子鬼を放さないなら、もう要らない。
「何言ってんだよ!節分だぞ!」
「恵方巻き、出してくる」
あの下品な話を、俺はお前に重ねたっていいけれど、まずは俺を恋人だと、認識しろ。
* * *
思い込み系クールデレ超絶美青年×奔放系天然ワンワン想定。
節分ネタありきというよりかは或るカップルの節分の日という感じ
2021.2.2
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