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グラスブーケを、
* * *
手を握る。同じベッドの中で、体温は彼のほうが少し高い。猫を抱いているみたいな日々は終わった。俺の指から彼の熱いくらいの手が擦り抜けていく。彼は野良猫になって、丸くなってしまう。こういう風に同じ方向を見るのは嫌だった。人生の設計図なら嬉しいことだったけれど。
ベッドを選びにいった日のことを悔やむ。ダブルベッドになんかしなければよかった。
他に好きな人がいるのだという。俺たちを縛り付けるものは何もない。約束だけだ。それも個人間のもので、保証人もいなければ紙一枚もない。俺か彼の意思で簡単に無いことにできる。もし彼があの日の一切を取り消したいのなら、俺は頷くしかない。まだ若いから。俺より4つも下で、根暗で口下手な俺と違って、陽気で人懐こく友達が多い。俺ひとりのわがままで、俺ひとりの満足で振り回したらいけない。俺は4つも上なんだから。残念だけれど。悲しいことだけれど。
会話がないわけではない。俺のほうが早く起きるから、目覚まし時計に巻き込むことをすまなく思って、毎朝謝り、彼は眠気の中で許してくれる。いつの間にか朝食も別々になって、なかなか顔も合わせなくなってきた。目を見てもくれない。完全に冷め切ったのだと思う。俺たちはもう元に戻れない。
彼は他に好きな人ができて、俺のことは…
失恋につけ込むような恋愛なんてするんじゃなかった。
帰り道に普段は気にもしなかった花屋が目に入った。小さな花束を持ったテディベアに、箱に入った薔薇や、鉢植えの中のオレンジの花とか、コップに入った虹色のものは作り物かも知れない。それからワイングラスに入った小さなひまわり。
彼のことを思い出した。退屈そうに本を読んでいる姿を一目見て、すぐ好きになった。
彼は若い。俺もまだ、世間ではずっと若いほうだけれど、こんな想いは一度でいい。何より他に好きな人なんていなくて、これから現れなかったら、なんて少し不安なくらいだ。
店へ入った。
別れて欲しいという彼に、今日こそしっかり話し合って、頷こう。だから、キズヲナメアウ相手が欲しかった。この決心が揺るがないように。
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穏和系年上スパダリ超絶美青年→→→←?猫寄り奔放ワンコ系想定
2021.2.16
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