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ドキしゅわポン ※
monogatary.comからの転載。
お題「わくわく入浴剤」
***
お湯に溶けると、しゅわしゅわしながらポンッておもちゃ出てくる入浴剤があったから買ってみた。
ソーダの匂いらしい。実家暮らしのアイツの家にお邪魔することになった。父ちゃん母ちゃんは妹と旅行らしい。家族仲はいいらしいケド、オレと遊ぶかもって残ってくれたんだって。嬉しいは嬉しい。でも家族旅行の思い出とかあるよなって。アイツは良くても、父ちゃん母ちゃんとか妹さんとか。
ま、アイツはオレが幸せにするからいいんですケド……アイツと言わず、オレが存在するだけで世の中の貢献になってるワケだが……
――みたいなカンジのコトを、常日頃から思ってる素直で善良で儚い美少年薄命のオレは、酔っ払って喋っていた。
アイツはへらへら笑って聞いてて、華奢で色白で陰気で優等生眼鏡なのに酒強いのかな。
オレの買ってきた入浴剤のパッケージ裏を読んでた。
「何が出たら嬉しい?」
「Bのメガうさメカ。水色の……」
眼鏡のうさちゃん型ロボットのやつ。なんとなく。
「俺はわがままネコがいいな」
「どれ……」
水色のしか見てなかった。入浴剤の裏側のおもちゃの種類見てたら、うさメカかネコ当てたくなってきた。
「昔は風呂の時間まで我慢できなくてさ、袋の中で割ったっけ……」
でも、なんか今は、まぁ風呂までの楽しみじゃね?って。
「今は?」
「いや、風呂まで待つだろ、フツー」
だって何が出るんだろ?ってしゅわしゅわの湯船に浸かりながら待つのが楽しいんじゃん。しゅわしゅわに浸りながら。
「待て ができるようになったんだな」
オレはイヌって気性 じゃない。どちらかってーとネコちゃんだ。かわいいし。まぁ、犬派なんですケド……
「バカにしやがって」
アイツはへらへら笑って、風呂を沸かしに行った。
オレは風呂が嫌いな子供だったんだよ。だからこういう入浴剤を親父がよく買ってきてくれた。なんか入浴剤にしてはぬるぬるするケド。懐かしいなって。あの頃には戻れないんだよな。それでもまだこのドキドキわくわくの入浴剤は売ってて。
昔のコト思い出しながらオレはアルコールに負けてうとうとした。テーブルを枕に寝落ちそう。
「風呂、明日の朝入るか」
風呂沸かしに行ったアイツが帰ってきた。
お風呂入らなきゃイチャコラできないじゃん。神経質だもん、コイツ。
「やら」
「明日の朝、俺と入ろう。何が出るのか楽しみだな」
「……うん」
オレは 待て ができるんでね。
***
970字強。
剽軽お調子者×優等生神経質眼鏡美人
2022.11.9
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