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郁巳side◇幸せ
「え。一緒に、寝んの?」
郁巳は、泰誠の提案に、目をぱちくりさせた。
「嫌?」
「え。嫌じゃないよ」
嫌じゃないから、そこは、即答。
「んじゃいこ」
泰誠に手を引かれて、泰誠の部屋に連れ込まれた。
「何もしないよ。ただなんか、郁巳と話したいし、顔見て寝たかったし」
横になった泰誠の隣に、同じように横になって、向かい合う。
「…これすっごい、照れる、ね」
郁巳のセリフに、泰誠もぷ、と笑った。
「分かる。――――…実際こうしたら、余計恥ずいな」
「…うん」
でも、なんだか、嬉しくなって、笑ってしまった。
「――――…郁巳ってさ」
「うん」
「いつからオレのこと好きだった?」
「…聞きたい?」
「聞きたい」
「…ずーと前から好きだったんだと思うんだけど… 一緒に暮らしたら、すぐ、分かっちゃった感じ…」
「…分かったって?」
「……泰誠のことしか、頭にないんだもん。ヤバいなーて。いっつも。でも、勘違いにしようと頑張ったんだけど…」
「そう、それ。 なんでさ、勘違いにしようなんてすんの?」
「――――…だから、泰誠は迷惑だと思ったから」
「…全部勘違いにしようとしたのか?」
「そうだよ」
「できんの、そんなの」
「…できなかったから、頼んだんだよ」
至近距離で向かい合って、ベッドの上。
触れそうで触れていないから、なんだか余計に、ドキドキする。
泰誠が、オレが泰誠の事を好きでも困らない、と言ってくれた日から。
――――…泰誠は、なんだか、すごく、優しい。
まるで、恋人に、するみたいな優しさ。
可愛くて、たまんない、て顔で、笑うし。
いつも近くに、居てくれる。
オレ、あの日、泰誠が好きになってくれるように説得する。なんて言ったけど。 …する必要が、感じられない位で。
だから、結局、大したことはしていない。
でもそのかわり、思ってることを隠さないことに、した。
「…ね、泰誠」
「ん?」
「――――… 何も、しないの?」
「――――…」
「ほんとに、何も?」
「しないよ。――――…明日早いし。そばで寝たかっただけだし」
「んー…… ――――………じゃあさ、手、貸して?」
「 …手 ?」
差し出された泰誠の、指に触れる。
そっと絡めて。もう少し、自分の方に引き寄せた。
「――――…泰誠の、手、大好き」
「――――…」
「…指、長くて。 綺麗。男っぽくて。カッコいい」
じー、と指を見つめながら、広げさせて、親指で、その指をなぞっていく。
「すっごく、好き」
「――――……」
泰誠は、何も言わない。
「――――……」
まだ、泰誠は、オレに好きだとかは、言ってない。
好きでいても、困らない、と言っただけ。
全然それでも、いいんだけど。
いつか、言ってくれるといいなあ、と思ってるし。
それに。
「――――…泰誠…」
じー、と見つめて。名を呼ぶ。
「あー、もう…」
泰誠の手に触れてた郁巳の手を離させて、両手首を掴むと。
泰誠は、郁巳の手を、ベッドに押し付けた。
上になった泰誠に、見下ろされる。
「…触り方、エロ過ぎる。バカ郁巳」
「――――……ごめん」
それに。
…泰誠、煽るのって――――…
すごい、簡単で。
――――… いつも、すっごくカッコイイのに、たまに、すごく、可愛い。
もうほんとに、日々大好きで。
「…泰誠、大好き」
自分の上に居る、泰誠を見つめて、そう言うと。
「――――…ベッドの上でそーいう事言うとか… 」
「……」
「オレ、今日はほんとにお前の顔見ながら寝たかっただけなんだからな」
「――――…」
うん。
そんなウソついてベッドに誘うとか、泰誠はしない気がする…。
「――――……泰誠」
「…ん?」
「オレね、めちゃくちゃ、今、ドキドキする」
「――――…」
「泰誠は…?」
「――――……してるよ」
「そっか――――……良かったー…」
言ったら、泰誠は、ふ、と、笑うような息をついた。
「…郁巳」
手首がそっと離されて。頬に触れられて。
ゆっくりゆっくり、大事そうに、唇が、重なった。
「…お前、ずっと、オレのそばに居ろよ」
「――――……」
そんな、言葉に。
好きなんて、言われるよりも。
ずっとずっと嬉しくなって。
「うん」
首に腕を回して。 ぎゅ、と抱き付いた。
「…泰誠、大好き」
言ったら、もう一度、優しいキスが、重なった。
触れそうな位の至近距離で見つめあって。かと思ったら、ぐい、と引かれて、体勢が上下逆になった。
仰向けの泰誠の上に。
密着するみたいに抱きしめられた。
「――――……明日早いし。今日はもうこのまま寝よ」
「…重くない?」
「……好きだから、いい。…早く寝ろよ」
……え。
え。今、何て?
起き上がろうとしたけれど、なにやらしっかりホールドされてて、動けない。しばし、もごもごもがいたけれど、ふ、と諦めた。
くすくす、笑ってしまう。
「――――……泰誠、おやすみ…」
「…おう」
ふ、と泰誠が笑うのが、体越しに伝わってくる。
友達では、ありえない、体勢で。
――――…こんな風に抱き締められて。
めちゃくちゃ幸せで。暖かい泰誠の体温に、あっという間にウトウトして。
眠りに、ついた。
だいすき、泰誠。
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