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離すなよ ★
「あっ、あっ、ああっ、んっ」
浴室に瑛斗の甘い声が響く。シャワーの中で執拗に続けられている相良の愛撫に、耐えられずに体が崩れそうになる。
もう、これで何度目だろう。絶頂に体が震える度に、もうこれ以上は無理だろうと思うのに、相良に優しくキスをされるだけで、あの綺麗な指で体を攻められるだけで、再び瑛斗の自身は膨らんだ。
瑛斗にとって、相良との交わりは初めてのことばかりだった。こういう経験は瑛斗だって女の子とだったら何度もある。けれど、こんなふうに自分が受け身になることはなかったし、男同士でする際の面倒な処理など知る由もなかった。
事が始まった時、瑛斗は戸惑った。自然と自分が受け側に回っていることにも、相良が愛撫する度に女の子のような声を上げて敏感に感じる自分の体にも。
瑛斗の体中を這う相良の手と舌を感じながら、浴槽の中でのやり取りを思い出す。
『瑛斗はここ、よく感じるな』
『んっ』
そう指摘されて、耳の後ろや首筋を舐められた。その感触に背筋がぞくっとして体を逸らせる。相良に後ろから抱き抱えるようにして一緒に浴槽に座り込んでいた。揺れる湯の中、相良の両手と舌で攻められる。仰け反らせた頭を相良の左肩に預けた。
『瑛斗』
名前を呼ばれてそのまま相良のほうを向くと、相良の舌がするりと瑛斗の口内へ入ってきた。
『ん……んんっ……』
唾液の音と一緒に、漏れる声。自分から生まれる熱と水温の熱さで、体が段々と上せていくのがわかる。
そっと舌を抜いて、妖艶な笑顔で相良が瑛斗を見た。
『ほんとに、瑛斗は可愛いいな』
離したなくなる、そう相良が呟いた。朦朧とする意識の中で、その言葉が瑛斗の中に深く沈んでいく。
離すなよ。
そう言いたい気持ちをぐっと堪える。相良が放った言葉が情事の最中に出た戯言でも、相良に深い意味なんてなかったとしても。瑛斗には、辛くて、切なくて、でも、それでも、心に閉まっておきたい、大事な一言だった。
「はっ、あっ、んっ、んっ」
「瑛斗、挿れていい?」
「ん……いいよ」
相良が瑛斗に壁へ両手を付かせて、腰を浮かさせた。相良の自身が、瑛斗の後孔にあてがわれ、ゆっくりと中に入っているのを感じる。そのまま抽送は段々と早くなり、リズミカルな動きで、瑛斗の中を刺激する。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
最初に挿入された時は、痛さと違和感しかなかった。それがこんな短時間で快感に変わり、その快感をもっともっとと相良に求めている自分がいた。それを自覚すると、瑛斗はなんとも言えない羞恥な気持ちになった。けれど、時間には限りがある。相良と交われるのはこの一晩だけで。それならば、この自分の欲に素直でいようと思った。後悔しないように。
「瑛斗、そろそろイくわ」
「ん……あっ、あっ、ああっ」
尻が震えるほど強く打ち付けられ、瑛斗の中の敏感なところを刺激する。その快感に両脚が耐えられず床に崩れそうになる。相良の両手が瑛斗の腰を掴んで引っ張り上げた。
「瑛斗、逃げんなよ」
そう後ろから耳元で囁くように言われて体が疼く。そんな相良の遠慮ない言葉でさえも、今の瑛斗には快感でしかない。
俺ってMなのか?
ふとそう思った瞬間に、んっ、と相良から声が漏れて、瑛斗の中に欲が吐き出された。
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