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Love3 一瞬の再会①

「……愛斗」 「何?」 「それ僕のパフェ…」 僕の言葉に一瞬食べる手を止めこちらを見た愛斗。 けれどすぐさま食べ始めた愛斗に、僕は行き場を失ったスプーンを手に見つめる。 今日の授業を終えた僕達は、大学から近いカフェに入り休憩する事に。 甘い物が大好きな僕達はパフェを頼んだ。 そこまでは良かった…。 最初に来たのは僕が頼んだチョコレートパフェ。 バニラアイスにこれでもかと掛けられた、たっぷりのチョコレート。 スプーンを手に食べようとした時、一瞬でパフェを目の前に座る愛斗に奪われた。 さも自分の物のように食べる愛斗に、僕は諦め水を飲む。 「お待たせ致しました」 暫くすると、愛斗が頼んだストロベリーパフェが運ばれて来た。 それ食べて良いからと言われ、僕は手を伸ばす。 冷たいアイスに甘いストロベリーソースが口の中に広がる。 美味しい…美味しいけど…チョコレートパフェ食べたかったなぁ。 愛斗は出会った時からこんな感じだった。 いや、あの当時はもっと心を閉ざしてた気がする。 友達になるのにそう時間は掛からなかったけれど、口の悪さのお陰で何度危ない目に合ったか…。 見ず知らずの女子から強烈なビンタを食らった事もあったっけ。 パフェを食べ終えた僕達はカフェを出る。 空は青色からオレンジ色に変わり、帰宅する人達が目の前の道を行き交っていた。 「げっ……」 「ん?愛斗?どうか…あ…」 さぁ、僕達も帰ろうか、何て話して向かおうとした時、目の前の愛斗が声を発し立ち止まった。 どうしたのかと体を横にズラして見れば、駅へと向かう人混みの中に見知った背中が見えた。 「見つかったら面倒くさいからもう少し待ってから行こ」 「へっ?何で?」 「あのムカつく奴に見つかりたくないから」 「あぁ…佳祐さんか…」 僕は大学内でのやり取りを思い出し納得。 愛斗は未だに遥か先の背中を睨み付けている。 ……あぁ、何だか嫌な予感しかない。 そう思い、僕は愛斗に睨むのをやめるように言おうとした時だった─。 おーい!ノアー!と大声で呼ぶ佳祐さんの声によって遮られてしまった。 道を行き交う人達が一斉に視線を僕達に向ける。 「あんのバカ男っ……!」 「ちょっ、愛斗落ち着いて!」 佳祐さんの大声で注目を浴びてしまった事に腹を立てた愛斗。 今にも殴り掛かりに行こうとする愛斗を必死で止める。 …内心、佳祐さんを恨んだ。 ✻✻✻✻✻ ✻✻✻✻✻ ✻✻✻✻✻ ✻✻✻✻✻ ✻✻✻✻✻ 「このバカのせいで変に注目浴びさせて悪かった」 「い、いえ…」 愛斗を止めるのに必死だった僕の前に、いつの間にか碧生さん達が来ていた。 何故か佳祐さんの頭にタンコブが3つできてたけど…。 僕と碧生さんの後で、怒りの収まらない愛斗が佳祐さんに説教していた。 こうなると長くなるのは分かっている僕は、小さく溜め息を付いて2人の間に入る。 「愛斗、その辺にしないと帰りが遅くなっちゃうよ」 僕は愛斗の肩を軽く叩き顔を覗く。 ギロッと睨まれたけど…早く帰らないと本当にヤバい。 「薫子(かおるこ)さんに怒られても良いの?」 名前を聞いた愛斗の肩が小さくビクついた。 薫子(かおるこ)さんと言うのは、愛斗の6歳上のお姉さんの名前。 愛斗が唯一恐れる人物。 「忘れてた…ノア行くよ」 「えっ、ちょっ!?」 顔を真っ青にした愛斗に強く手を引かれ、僕は駅へとダッシュする羽目になってしまった。 碧生さんと佳祐さんに挨拶も出来ぬまま。 あぁ、連絡先でも聞いておけば良かったと後悔する。 駅の改札を通り、息を切らしながらホームへと向かう。 帰宅ラッシュの時間帯ともあって凄い人。 それでも電車を待つ人の列に何とか並ぶ。 また、彼に会えるだろうか…? 借りている碧生さんの服を、そっと握り締めた──。

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