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第一章「アトリエ」 プロローグ
母さんは、シングルマザーだった。
小学校の授業でお米の炊き方を習った日。母さんの帰りを、お米を炊いて待った。
「あむ君、ありがとう。あむ君の炊いたご飯美味しいね」
その日のお米はちょっとだけ硬くて、それは芯が残っているという状態だということを知った。吸水することを学んで、好みのご飯が炊けるようになった頃、今度は一汁三菜という言葉を知った。お味噌汁を作るようになった。市販の顆粒出汁に、野菜と味噌を溶かしただけの簡単なやつ。
母さんはいつも「美味しいね」って笑顔で食べてくれた。
お手伝いしてえらいねって周りは言ったけれど、歩夢にとって料理を作ることは母と楽しい晩御飯の時間を過ごすためのもので、好きなことだった。
料理を作ることが嫌いになってしまうかもしれない。
いまはそれが、いちばん怖い。
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