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第14話

 川をどれほど流されたか、裏側は何処かの河原に辿り着いていた。 「ん……」 「良かった気付いた〜」  目を開けると赤い瞳と目が合う。一瞬、漆黒かと思ったが、髪が灰色であった。手と足はもふもふした毛で覆われている。恐らく人形よりの魔物だ。  ビックリして飛びのく裏柳。 「驚かせてごめんね。君、人間だよね?」 「ああ……」  どうやらこの魔物が助けてくれた様である。周りに獣の死骸が転がっていた。 「危なかったよ〜、ここに転がってる獣に輪姦されそうになってたよ〜」 「そうかすまない。助かった」 「なんで全裸なの?」 「服を脱がれた」 「獣に襲われちゃったんだね」 「その様なものだ」 「災難だったね〜」  へらへら笑う魔物はどうやら優しい魔物の様だ。 「すまんが何か着れる物は無いか?」  せめて下半身だけでも隠したい。 「ついておいで、近くに僕の家があるんだ」  そう言われて、着いて行く事にした。  少し歩くと、川の畔に隠される様に洞窟があり、中に入る。  奥まで進むと、中に大きな建物があった。  どうやらこの建物全体が彼の家らしい。 「すごい動物園の様だな」  中に入ると、動物が沢山飼育されていた。   動物好きなのだろうか。  それにしては……   何だか怯えている。 『危険だよ』『逃げて』『怖いよ』  そう言っているのだ。  もしやコイツは…… 「どうかした?」  ニコリと微笑む魔物。 「いや……」  ここは気づかない振りをしよう。  どっちにしろここから逃げ出しても獣に襲われるだけである。 「はい、これを着て」 「これ……」  なんで女性もののメイド服なんだ!! 「ごめんね。君小さいからさ、女物しか合う物が無かったよ」 「そうか」  じゃあ仕方ない。  何も着ないよりは良いか。  裏柳は仕方なくメイド服を着る。 「そうだなぁ、君はこれから僕のメイドになって貰う事にしよう」 「えっ!?」  ニコリと微笑む魔物。  何故か裏柳はここでメイドする事になってしまうのだった。   「裏柳ーー! 裏柳ーー!!」  虎と裏柳の匂いを頼りに追いかける漆黒。  途中、見失ったらしくウロウロしていた鳥と合流し、二人で追いかける。 「見えた!」  虎の後ろ姿が見えた。  直ぐに追いついて、捕まえる。  腕を掴んで捻り上げ、地面に押さえつけた。  裏柳!?  裏柳は何処だ!!?  虎が掴んでいるのは裏柳の着物。 「貴様っ!」  匂いに気付かなかった。  途中で川に投げ捨てたのか! 「鳥! 川だ。川を探すぞ!」  直ぐに引き返そうとする漆黒を引き止める虎。 「漆黒様……」 「お前は城に戻れ」  漆黒はそれだけいい残すと、先に行った鳥を追いかけるのであった。   虎も漆黒の後を追いかける。

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