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第13話

 今日も暇な裏柳は鳥とお話しをしていた。  鳥は漆黒達の様子を断片的に見ては伝えてくれる。  どうやらセックスしなかった事を今日も怒られてしまったらしい、それから漆黒は城の人達と話して回っており、なぜか虎と羊とワニは俺を捨てる話しになっている様だ。  本当に何故!? である。  あまにも急展開過ぎて、裏柳も頭が追いつかない。  え? 俺、捨てられるのか?  セックスしない役立たずの妃だからか?  確かに白の国からΩを貰って来たと言うのにセックスもしないんじゃ役立たずである。しかも出来損ないΩだ。  確かに他のΩを貰った方が良いだろう。それが漆黒の為である。  今なら漆黒が怖い化け物では無いと解るので、裏柳が口添えしてやる事も出来る。  黒の王国とも条約を結ぶよう取り計らう事も出来るだろう。  そもそも何故こそこそ隠れているのだろうか。  そんな事より捨てるとは!?  何故、急にそんな話しに飛躍してしまうのか裏柳には意味が解らない。  どうしよう。  取り敢えず大事な錫との思い出であるシロツメグサの栞を握りしめた。 「裏柳様ご免!」  ドアをぶち破って入ってきたのは虎である。  ぶち破るんだ!? と、変な所に驚く裏柳。虎は裏柳をかっさらう様に掴むと今度は窓をぶち破り、走って逃走する。 「うわぁぁ! あの、俺、捨てられるんですかーー!!?」 「申し訳ないがそうさせて頂きます」 「そんなぁ~~」  せめて話し合いだけでも。 「このまま俺を森に捨ててどうするのですか? あの、話し合いましょう。確かにセックスもしなければ子供も作れそうにないので役立たずなのは解りますけども、国に返して頂ければ、話して別なΩを……」   すごいスピードで霧深い森を駆け抜ける虎、既に城は見えなかった。   裏柳は必死に話しかける。  このまま自分を捨てるのは、彼らに取っても得策ではないはずだ。 「どうせ国に返せば記憶は消えるのです。内と外では記憶を持ち越せない。貴方が側に居ると我が王は考えを鈍らせてしまう。貴方が居ると困るのです。世界の為にも貴方には死んで頂く他ありません」 「どういう事ですか? 解りやすく説明して下さい」  話がとんでもなく飛躍しすぎて意味を噛み砕けない。 「失礼」  虎は裏柳から服を剥ぎ取ると、川に突き落とした。 「うわぁぁ!!」  川へ落ちて行く裏柳を尻目に、虎は裏柳から剥ぎ取った服を掴み走り続ける。  どうか王が騙されてくれますようにと。  最後の一人に話を聞いている時である。  漆黒は異変を感じ取った。   異変は裏柳の部屋からだ。  直ぐに裏柳の部屋に向かった。  この感じは誰かが城を壊して出ていった。  人数は二人。  何があった!?  部屋に着くと壁と窓が壊され、裏柳の姿は無くなっていた。 「これは、どう言う事だ!?」  部屋の側に立つのは羊とワニ、虎はどうした。 「お許しを」 「うわぁ! 何をする!!」  羊にかけられた水は漆黒の瞬間移動する能力だけ一時的に奪う薬品である。 「お前達」  漆黒は声を低くし、威嚇する様に羊とワニを睨んだ。間違いなくこら謀反である。 「申し訳ありません」 「もう、こうする他……」  二人は膝をついて頭を下げた。 「裏柳……」  裏柳を森に捨てたのか。  直ぐに助けに行かなければ、漆黒は反射的に駆け出す。 「行かせません」  ワニが漆黒のマントに噛みつき、引き止める。 「どうか現実を見て下さい王。裏柳様の事は忘れて新しいΩを……」  そう涙目で懇願する羊。 「煩い離せ!」  漆黒はワニに噛まれたマントを引きちぎり外に飛び出した。 「王ーー!」 「王ーー!」  引き止める二人の声はもう漆黒には聞こえない。  ただただ裏柳が心配であった。  どうか無事でいてくれ。

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