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第28話

 広場に着くと本当に賑わっていた。  容姿を気にしなければ普通の町の様である。  鳥族や羊族が洒落な洋服を売っていたり、猫族やワニ族が肉料理を、馬族や、兎族が野菜、犬族が武器等を売っていたりする。草食動物達と肉食動物達が一緒に居るのは若干恐怖なのだが、大丈夫なのだろうか。食べられちゃったりしないのだろうか。 「ここには攻撃的なタイプを遮断するバリアを張ったから大丈夫だ」  裏柳の視線に考えを読み取ったのか、律儀に教えてくれる漆黒。  漆黒が守ってるなら大丈夫か。  確かに出入り口のゲートにはちゃんと門番らしい兵隊が護っている様子である。  何も無かったただの広場が数日でこんな事になるとは、驚きだ。 「俺も黒の王国に町が出来るとは…… いやぁ、夢の様だ」 「……うん」  全部内心を読み取られてしまう。  若干恥ずかしいし、怖い。 「う…… 柳」 「?」  急に裏を取られてビックリする裏柳。  呼ばれたと思ったが、気のせいか?  柳の木でもあっただろうか?  キョトンとしてしまう。 「本名は皆にバレてしまうだろうから念のため……」  そう耳打ちされて、ああとなる。 「解ったよ錫」 「なんでそっちなんだ」  笑顔で頷く裏柳に漆黒は若干恨めしささえ感じた。  クロとかで良いだろう。  ちょっとムッとしたが、まぁ良いか…… 「何か気になるのがあったら言えよ。ほら、あのネックレスとか、似合いそうだぞ」 「うーん」  露店を見て周る二人。色々あって見るだけで楽しめる。 「あ、あれやりたい」  フと、目に止まった店に裏柳は足を止めた。 「あれ?」  漆黒が視線を向ける。裏柳が興味を持ったのは『初心者鳥さんの簡単、自分の羽で作くれる小物』屋さんであった。 「あ、でもこの羽、元に戻る時消えちゃうのかな?」 「いや、抜けた羽はそのままになるだろう。そうだな記念にやってみるか」 「わーい!」  楽しそうな裏柳。普段真面目な顔で大人びているのに、たまに子供っぽくはしゃぐのが可愛い。  漆黒もフフッと笑ってしまう。  二人で小物作りの体験をする事にした。  ベテラン鳥さんが丁寧に教えてくれ、裏柳でも自分の羽でハンカチを作る事が出来た。  楽しくて三枚も作ってしまった。  一枚は自分用、もう一枚は漆黒に、そしてもう一枚は鳥族の長さんへのプレゼントにしよう。  ちゃんと手土産が出来て良かった。 「可愛いハンカチが出来て良かったな」  そう言う漆黒はやたら器用を発揮して、ハンカチ何処か毛布を仕立てていた。  暖かそうである。 「一枚しっ……錫にあげる」  そう、漆黒用に作ったハンカチを渡す。 「俺にくれるのか! 嬉しい!」  喜んでくれた様で裏柳も嬉しい。 「俺もお前にこれ作ったんだ」  漆黒も裏柳に何か作ってくれたらしい。 「これ……」  手渡された物にビックリして固まる裏柳。 「ストレスに効くらしい」 「そう……」  それは凄いレース仕立ての可愛い下着であった。  裏柳は顔を真っ赤にしてしまう。  他の意は本当に無いのだろうか。  今夜誘われているのだろうか。  吝かではないが、こんな所で下着を渡された俺はどうしたら良いんだ。  裏柳はオロオロしてしまう。  そんな裏柳を他所に漆黒がパチンと指を鳴らすと下着が消えた。  更に裏柳はビックリしてしまった。 「俺の部屋に毛布と一緒に送っておいた」 「あ、有難う」  本当に魔法って便利である。  そして毛布どころか下着まで作っていたとは、店の鳥さんもさぞかしビックリした事だろう。  初心者さんがもうベテラン超えをしてしまっている。  体験を終えた漆黒と裏柳は暫し露店を楽しみ、食事を楽しんだり、輪投げを楽しんだりした。  漆黒が輪投げを全部入れてしまうので、輪投げ屋さんのおじさんに追い返されたりした。  荷物は漆黒が指を鳴らせば部屋に送り届けられるが、部屋が大変な事になってるかもしれない。  広場を十分に楽しんだ漆黒と裏柳。頃合いを見て、鳥の長の家に向うのであった。

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