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第27話

 漆黒を思い、白亜に対する様に自分を殺して漆黒にも対応しようと思ったが、ままならなかった。ただただ漆黒を悲しませるだけであり、王妃には徹せなかっかった。漆黒に上手く言いくるめられてしまった様である。  結局、漆黒はハーレムを作りたらがら無いし、新しいΩも見つけようとしない、白の国と交流も持とうとしなければ、かと言って自分を番にもしてくれない。  部屋に入る時は相変わらずノックしてくれないし……  ノックしてくれないのはもう慣れたから良いのだけど。  何の問題も解決していなかった。  自分はいまだ籠の鳥の様である。  やはり本当に愛してくれているのだろうか。自分は漆黒の愛玩動物なのではないかと疑ってしまう。  まぁ愛玩動物としてでも愛されているのなら良いと我慢したら良いのだけど、悲しい。  なんだか上手い口車に乗せられたて結婚詐欺に合った様な気分である。  それならそうと愛玩動物の様に振る舞えば良いのだろうか。  裏柳はモウモウと考えてしまう。   「今日は天気が良いから出かけよう」  その日の昼下がりは黒の王国では稀に見る天気の良さであった。  仕事を早めに終わらせた漆黒が裏柳を誘う。  裏柳は相変わらず図書館で本を読んでいた。  この国の人は本を書かないらしいが、この図書館には世界各国の本が集められている様で、裏柳はもっぱら本ばかり読んでいる。 「ああ」  お出かけなんて初めてだ。裏柳も立ち上がると本を棚に戻した。 「今日は天気が崩れない事を確かめたから安心してくれ」    漆黒は自信満々である。 「広場まで遊びに行こう。最近は露店なんかが増えてな。皆楽しそうなんだ。裏柳が来てくれたお陰だと皆喜んでいるんだぞ」 「え!? 大丈夫なのか!?」  王様とその妃が普通に出かけて大丈夫なのだろうか。  顔は普段隠しているから解らないにしても、人間だから直ぐにバレてしまう。  大騒ぎにはならないだろうかと、裏柳は心配する。 「流石に堂々と行くのは不味いから変えていく」 「変える?」 「ちょっと薬の力を借りなければいけないんだけどな。貴重な薬だからあまり頻繁には使えないが今日ぐらい良いだろう」  漆黒はそう言うと、小瓶を取り出した。  裏柳と喧嘩をしなければ祭りの夜にでも連れ出そうと思い、作っておいた薬である。  満月の夜に一時間だけ開く花の蜜から作るのであるが、あまり咲かない上に、作り方もなかなか難しいのだ。  漆黒はそれを紅茶に混ぜる。 「これを飲むとどうなるんだ?」 「あらゆる魔物や獣に化けられる」 「魔物や獣に!?」   そんな事が出来るのかと、驚く裏柳。 「まぁ、半日程度しか持たんがな」 「すごい……」 「今回はフラミンゴの羽を拝借したから、フラミンゴに化けられるぞ」 「フラミンゴになれるのか」  裏柳は興味津々だ。  漆黒が先に紅茶に口を付ける。  ピンクの羽の翼が生え、髪が銀色に、瞳の色はアメジスト…… 「ふええ!!??」  何で錫になってるんだ!??? 「ああ、少し色落ちするんだ」 「色落ちするとそうなるのか!!??」  フラミンゴになった漆黒は手と体はそのままに、羽根が生え、見た目は錫である。足は木に止まりやすい様に鳥の足へと変化していた。 「ほえ〜」  思わず変な声が出てしまう。  フラミンゴの漆黒可愛い。と、言うか、錫なのか?  錫と呼べば良いのか? 「ほら、俺の観察はもう良いだろう。裏柳も飲めよ」  ジロジロ見られて少し恥ずかしくなったのか、ムスッとして紅茶を飲むようにとすすめる漆黒。  裏柳は恐る恐る飲んでみる。  直ぐにパサっとピンクの羽根が生え、足が鳥の足に変化する。  多少の苦痛が伴うかとも思ったが、何の痛みも感じずに、直ぐにフラミンゴに変化していた。  容姿はどうなのだろう。  漆黒の様に色落ちしているのだろう。 「どうだ?」  そう漆黒に見て貰う。  何も言ってくれない。  変なのだろうか。 「かっかっかっ……」 「かっかっかっ?」  漆黒のお気に入りペットの烏さんなら漆黒の隣で飛んでいる。 「可愛い!!」 「可愛いのか?」  そんなにも顔も変わったのだろうか。気になる。 「フラミンゴの裏柳可愛い!」 「フラミンゴの漆黒も可愛いぞ」  もしやフラミンゴは基本的に誰がなっても可愛いのかも知れない。ピンクだしな。 「俺はカッコいい方が良いんだが……」  漆黒は少しムスッとしてしまった。 「カッコいいし、可愛いぞ」 「可愛いが余計だ」 「可愛いもんは可愛いんだから仕方ないだろう」  ハハっと笑ってしまう裏柳。だって錫は女の子みたいに可愛かったからな。  今は確かに体格も良いし、カッコいい。  でもやっぱり可愛い。  と、言うか、普段の漆黒もカッコいいけど可愛いと思うんだが…… 「まぁ、良い。さぁ出かけよう」 「うわぁーー」  漆黒に手を繋がれ、そのまま外に飛び出す。  ここは高層階であるが、羽根がちゃんと羽ばたいてくれた。  すごい! 「やぁ!」  そう声を掛けてくれたのは鳥族の長のペットの鳥である。 「おお、ちゃんと迎えにきてくたな」  そう返事を返したのは漆黒である。 「ええ!!??」  いつの間に鳥と話せる様になったんだと驚く裏柳。 「ああ、鳥に変化してるからな鳥の言葉が解る様になる。だが裏柳と違って同じ種族の言葉しか聞き取れないのだがな」  裏柳が驚いた理由を察知し、漆黒は律儀にも説明してくれた。 「鳥族の長がお茶会に誘ってくれてな。町を見たらお邪魔する予定なんだ」 「えっ! そうなのか!」 「フラミンゴも誘ったぞ。鳥、俺たちは後から行くから宜しく頼む」  漆黒はそう言うと、鳥と別れを告げた。  漆黒のペットの烏は鳥に着いていく。どうやら烏も長に会いたかったらしい。  鳥はフラミンゴを迎えに来た様だ。 「菓子折りとか持っていかなくて良いのか?」  この前の非礼を侘びたいが、何も聞かされて無かったので何も用意出来なかった。  前もって言ってくれた良かったのにと思う裏柳。 「ワニに作らせたお菓子をフラミンゴに持たせた」 「ふーん……」  でも自分も何か用意したかったなぁ……  裏柳はちょっとモヤモヤしつつも、漆黒との空の散歩を暫し楽しむのであった。

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