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3.大事な大事なご主人様3
「それは……大変な思いをしたんだな……」
「七海……だから、肉まんで泣いてたのか……」
「成長期なのに腹を空かせて………ん? 肉まん?」
「……あっ?!」
七海の話を聞いて涙ぐむ二人の姿は、本当に親子なんだと再認識するくらい似ている。他人の苦労話で涙する彼らは、なんて感受性豊かなのだろうか。
晴太郎の余計な一言で秘密にしていた買い食いはしっかりとバレてしまったようだ。あわてて口を抑えたが、時既に遅し。
「今回は買い食いは多めに見るとして……七海君。暫くうちに泊まって、晴太郎の教育係になってくれないか?」
「……教育係?」
「この子も君に懐いているし……教育係と言っても、身の回りの世話をしたり、遊んでやったりするだけでいい。私は足が悪いので一緒に遊んでやれなくて……もちろん、学校に行っている間は気にしなくていい。衣食住も保証する。どうだろうか?」
「七海、うちにすむのか?!」
ぱあっと顔を明るくして晴太郎が声を上げた。いつの間にか随分と懐かれてしまったようで、なんだかとても嬉しそうだ。本当なら、どん底から救ってくれたこの少年のために教育係でも召使いでも何でもやりたいところだが。
晴太郎は期待に満ちた表情で七海の返事を待っている。そんな顔をされたら断り辛いが、残念ながらこの誘いは断らねばならない。
「……すみませんが、お受けできません」
「ええっ、七海……」
「悪い話ではないはずだが……理由を聞いても?」
「自分には、父親が残した借金があります」
七海の父親が残した借金は、今も利息でどんどん膨れ上がっている。本来ならば、学校なんてすぐにでも辞めて働いて返済しなければならないのだ。
間違いなく彼らは取り立てに来るはずだ。あの名刺と一度あった取り立ての人を見る限り、きっと明るい組織ではない。もしその時に晴太郎の家で住み込みで働いていたとしたら、間違いなく迷惑がかかってしまうし、幼い彼に怖い思いをさせてしまうかもしれない。七海はそれが嫌だった。
そうか、と社長は顎に手を当てて少し考える素振りを見せる。隣に座る晴太郎は泣きそうな顔でこちらをじっと見ている。こんなにも自分のことを望んでくれているのに。申し訳なくて目が合わせられない。
「……つまり、その借金が消えれば問題無いんだな?」
「はい…………え?」
「その名刺を貸してくれ」
「は、はい……」
七海は言われた通りに例のド派手な名刺を渡す。社長はそれに目を通すと、内線電話をかけた。
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