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7.誕生日3
晴太郎が熱を出したとき、りんごが食べたいと言うのは昔から変わらない。今回もきっとそう言うであろうと思い、昨日のうちにいくつか買ってきたのだ。
きっとあまり食べられないだろうから、4分の1カットを擦りおろす。
それを部屋に持って行き、晴太郎に食べさせていると、玄関のチャイムが鳴った。きっと紗香が来てくれたのだろう。
「お忙しい中、わざわざ来て頂きすみません」
「いいのよ、晴ちゃんのためだもの」
玄関先に居たのは紗香と黒木だ。紗香を晴太郎の部屋に案内し黒木はリビングへ案内する。わざわざ来てくれたふたりに、お茶を出そうと七海はキッチンで準備をしている。
「黒木さんも、わざわざありがとうございます」
「私たちは大丈夫だ。晴太郎様、誕生日なのに可哀想にな……」
「ええ、そうなんです。紗香様からネズミーランドのチケットを頂いて、とても楽しみにしていたのですが……」
2人で待つこと20分程度。紗香がリビングにやってきた。
「検査したけど、残念ながらA型インフルエンザね」
「やはりそうでしたか……」
この季節にあの高熱。七海もそうだろうと予想していたので驚きはしない。
「あとで黒木に薬を持って来させるから、ちゃんと飲ませてあげてね」
「それくらいでしたら、私が取りに行きますよ」
「駄目よ、七海は晴太郎のそばに居てあげないと。あの子、寂しがり屋なんだから」
「……はい、わかりました」
何から何まで申し訳ない、と七海は頭を下げた。先日の件といい、この2人には迷惑をかけ過ぎだ。今度何か礼をしなければ。
「じゃあ私たちはもう行くけど、分からないことがあったら何時でも連絡してね」
「え、もう行かれるのですか? お茶でも……」
「せっかくだけど、ごめんなさい。仕事に行かなきゃ」
「そうでしたか。引き止めてしまってすみません」
「いいえ、気にしないで。じゃあね」
そう言うと2人はさっさと家を出て行ってしまった。本当に忙しそうだ。
七海は2人を見送った後、冷たい水で絞ったタオルを持って晴太郎の部屋へ行く。いつもなら声を掛けてから入るが、寝ているかもしれないので静かにドアを開いた。
「……ぅ、ななみ?」
七海が部屋に入ると晴太郎はすぐに気付いたようで、ゆっくりと目を開いた。
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