30 / 170

7.誕生日4

「すみません、起こしてしまいましたね。タオルを取り替えます」 「うん……ありがとう……」  額に乗せていたタオルを新しいものに取り替えると、晴太郎は気持ちよさそうに目を閉じた。  熱のせいで赤くなってしまった頬に触れると、思った以上に熱かった。もしかしたら熱が上がっているかもしれない。 「七海の手、冷たくて気持ちいい……」  もぞもぞと布団から手を出して、晴太郎は頬に触れていた七海の手をきゅっと握る。頬だけでなく手も熱かった。   「欲しいものや食べたい物があれば持ってきますが、何かありますか?」 「………ななみ」 「はい?」  握った手にぎゅっと力が入るのがわかった。 「……俺が寝るまで、傍にいろ」  弱った主人が寂しがり屋になるのは昔から変わっていない。まるで幼児のような可愛いおねだりに、思わず笑みが溢れる。  顔が赤いのは、もしかしたら熱のせいだけではないのかもしれない。 「あなたが寝るまで、ずっと此処に居ますよ」  そう言って握られていない方の手で頭を撫でると、晴太郎は安心したように目を閉じた。  今日はもともと晴太郎のために時間を使う様に予定を組んでいた。彼の看病以外に何も予定はないので、ずっと傍に居ることは問題ない。  傍に居るだけで何もしないでいると急激に睡魔が襲ってきた。クリスマスパーティーからそこそこバタバタした日を送っていたし、昨夜は晴太郎の看病であまり寝ていない。七海も疲れが溜まっていた。  晴太郎から静かな寝息が聞こえてきたのを確認して、七海は晴太郎の眠るベッドへ寄り掛かる様にして座る。  完全に眠ってしまっては、晴太郎に呼ばれた時に動けない。ほんの少しだけ休もう、と七海は静かに目を閉じた。   *  ーーピンポーン……  インターホンの鳴る音で目を覚ます。晴太郎も目を覚ましたようで、もぞもぞと布団が動いた。  はっとして時計を見ると、昼はとっくに過ぎていた。思った以上に寝てしまったようだ。 「坊ちゃん、すみません。すぐに戻ります」  そう声をかけると、握られていた手が解放された。たぶんインターホンを鳴らしたのは黒木だ。薬を持ってきてくれたのだろう。七海は急いで玄関へ走る。

ともだちにシェアしよう!