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11.家族の集まり4
*
そして旅行の日がやって来た。
天気は快晴、気温も高く、絶好の旅行日和。七海と晴太郎は車で東京駅まで行き、そこで他の兄弟たちと合流する予定だ。
「あれ、マフラーは持って来なかったのですか?」
「うん、あったかいからいらない!」
ガラガラと2人分の荷物が入ったキャリーバッグを引き摺る七海と、小さなリュックを背負って軽快に歩く晴太郎。久々に旅行に行くからだろうか、晴太郎はとても機嫌が良い。足取り軽く、スキップを始めてしまいそうなほど楽しそうに歩いている。
彼の格好は今日の気候にはとても合っているが、若干薄着に見える。チェスターコートを着てマフラーまで準備している七海とは違い、マウンテンパーカーを羽織っただけ。これから東北に行くと言うのに大丈夫だろうか。
東京駅は広くて人が多い。1番分かりやすいように、駅のホームで集合することになっている。
「あ、七海。お菓子買っていくぞ!」
改札の中に入り、すぐに売店を見つけた晴太郎は吸い込まれるように入って行った。七海も慌てて追いかける。
「あ、晴太郎じゃん!」
「わっ、かな姉さん!」
小さな売店の自動ドアが開くと、中から香菜子と彼女のお世話係兼マネージャーの須藤が出て来た。
「あ、七海もいる〜! おはよー!」
「おはようございます、晴太郎様、七海」
七海の姿を見つけて笑顔で手を振る香菜子と、晴太郎にぺこりと頭を下げてあいさつする女性、須藤。
彼女の姿を見つけ、七海は無意識にピシッと背筋が伸びる。この須藤という女性は使用人たちの中でも優秀で有能、そして厳しいと有名な人物だ。中条家に来たばかりだった頃に七海も色々と教わった、というかマナーや礼儀、家事などビシバシ叩き込まれた。
七海に向かって手を振る香菜子を見た途端、晴太郎は七海の腕を抱き込むようにしがみ付いた。眉間に皺を寄せ、警戒するように香菜子の方を見ている。不可解な晴太郎の行動に七海は驚いたが、香菜子は盛大に吹き出した。
「あははっ、大丈夫! 七海取らないから、そんな警戒しないでよー」
「……スカウトも駄目だぞ!」
「しないって! お姉ちゃんに優しくしてよーう!」
そのやりとりを見て察した。クリスマスパーティーの時のことを根に持っていたのだ。必要とされていることが嬉しくてニヤケそうになる。こほん、と咳払いして誤魔化した。
そんな姉弟のやりとりをみていた須藤が、大きくため息を吐いた。
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