152 / 170
24.私の主人はワガママな神様12
*
目が覚めると、見慣れない天井に、見慣れない豪華な照明が視界に入る。
自分の家より広い洋室、家にあるベッドより大きなベッド、そして大きな窓から見える都内の景色。
昨夜、ホテルに泊まったことを思い出して、ゆっくりと起き上がった。下着を身につけてバスローブを羽織っただけの慣れない格好で寝ていたせいか、ほとんどバスローブは脱げてしまっていた。さすがにだらしないなと思い、バスローブを羽織り直した。
隣のベッドはぐちゃぐちゃになったままで、昨日の情事を思い出させる。しばらく会えなかった寂しさを埋めるようなその行為は熱く、大変盛り上がった。もちろん、最高だった。
同じベッドで一緒に寝ていたはずの晴太郎の姿は見えないが、隣のリビングから音がするので、そちらで何かしているのだろう。
さすがに起きようと思いベッドから降りる。床に散らばっているスーツやシャツを拾って、適当なハンガーにかけた。少し皺になってしまっているが、着れないことはない。
「お、起きたか。おはよう」
リビングに行くと、晴太郎がリビングのソファに座っていた。昨晩は彼の方が疲れていたはずなのに、ケロっとしている。
晴太郎はスーツに身を包んでいた。しかも、見ただけで上質な物だとわかる、ブランド物のスリーピース。
今日は予定はないと聞いていたが、 七海の聞き間違いだったのだろうか。
「おはようございます。あれ、どこか出掛けるんですか?」
「いや、どこにも行かないぞ」
どこにも出かけないらしい。七海の聞き間違いではなかったようだ。
ではなぜスーツを、と寝起きの頭で考えてると、晴太郎がポンポン、と自分の座っているソファの空いたスペースを叩いた。
「七海、こっちに来てくれ」
言われるがままに、彼の右隣に腰を下ろすと、急に左手を握られた。
「ちょっと、手を貸せ」
「……? はい、どうぞ」
晴太郎が何をするのかはわからないが、言われた通りに好きなようにさせていると、すう、と薬指に冷たい感触がした。それがピタリ、と薬指の付け根を囲うように収まると、彼は手を離した。
なんだ、と自身の手元を見ると、そこにはキラキラと輝きを主張する、銀のリングがあった。
「……うん、ぴったりだな!」
「…………えっ?!」
その銀色の意味を理解し、驚いて晴太郎の方を見ると、満足そうに笑う彼と目が合った。
「七海、お前の人生を俺にくれないか?」
ともだちにシェアしよう!