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第2話
それにしても……。
まったく、あいつら!!
狼が何もしてこねぇのをいいことに、ほんと進歩ねぇな!!
……だけど俺は知っている。
本当は、狼がものすごく強いこと――。
それは、隣町にいる人間たちが俺をさらいに来る前から、知っていたことだ。
だって狼は、いくら殴られても――蹴られても、やり返さない。
それは、人の痛みを知っているからだ。
他人を傷つけることを、狼は嫌っている。
狼は、他人の気持ちを思いやることが出来る、とても優しいオオカミなんだ。
それって、ものすごく強い証拠だ。
だからきっと、今の長のように、狼だってこの村を立派に守ってくれることだろう。
狼の側にいると、すごく安心できるんだ。
だけど狼がいつまでもやり返さないと、狐や兎がずっと図に乗ったままになっちまう。
あいつら、バカだからな。
……しょうがねぇな、だったら俺が――。
「狼を守ってやるからな」
狼が俺を守ってくれたように、俺も……。
「赤ずきんくん……。大好きっ!!」
「うわっ」
決意を口にすると、狼が抱きついてきた。
ポンポン。
頭を撫でてやると、狼が俺の身体にしがみつく。
可愛いし……。
俺、恥ずかしくて、あんまりお前みたいに好きって素直に言えないけれど、俺もちゃんと好きだからな。
そういう気持ちを込めて、俺も、たくましい背中に腕を回した。
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あかずきんくん。
おまけEND
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