21 / 29

番外編・とある兎くんの恋愛事情:第1話

 僕はうさぎ族の()って言います。  僕はオオカミ族の(ろう)くんをいつもキツネ族の()くんと一緒にいじめてます。  叩いたり、蹴ったり……。 「や~い、泣き虫オオカミ!」 「泣き虫!!」  こんなふうに。  狼くんはけっして、やり返してはきません。  僕と狐くんの間でただうずくまり、頭を抱えて泣くばかりです。  最強と言われているオオカミ族では考えられないくらい、とても弱いです。 「うわ~ん、やめてよっ、いたいよっ!!」  だけど狼くんには、とっても強い味方がいます。  それは……。 「ごるぁああああっ! お前ら、俺の狼をいじめるなっ!!」 「げっ、凶暴赤ずきんだ、逃げるぞ、兎!!」 「う、うん」  狐くんに手を引っ張られ、僕たちは赤ずきんくんから逃げる。  これが、僕と狐くんの日常。  ……本当はね、いじめなんて良くないってわかってるんだ。  それでも狼くんをいじめるのは、実は……すべてはこのためだったりする。  胸が大きく鼓動するのは、とっても強い赤ずきんくんから逃げているからじゃない。  ――実は僕、狐くんが好きなんだ。  襟足よりも少し短めの黒髪に、凛々しい一重の目。  それからそれから、長い足。すらっとしたモデルさんみたいな体型に、ピンって尖った耳。  対する僕は、垂れ耳で、チビで、甘栗色の長めの髪。  大きな目をした二重の軟弱そうに見える僕なんかよりも、ずっとず~っと格好いい狐くん。  ……でも、やっぱり。  いじめるのは、よくないね。  いくらこの村を守るオオカミ族が弱虫だからって、狼くんをいじめるなんて、よくないよね。 「もう、やめようよ、こんなこと……」  だから僕は、狐くんにそう言った。 「なんだよ! お前も狼の味方かよ!?」  言ったとたん、狐くんは僕を鋭い目で睨んでくる。  軽蔑するような目で……。 「そうじゃない、僕は!!」

ともだちにシェアしよう!