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第2話
「優しい狼に流されたのか?」
狐くん?
違うよ。
そりゃね、狼くんは優しいよ?
でも、でも僕が好きなのは、凛々しくて、狼くんをいじめているけれど、実は、この村を隣村の奴らから奪われないよう、見回りをしている責任感がある、狐くんが好きなんだよ。
「なんで……そんな言い方……」
大好きな人に僕の気持ちが理解されてない。
そりゃね、僕は狐くんと同性だし、恋愛対象には見られないかもしれないけれど、でも、でも僕は狐くんを異性として見ているんだ。
赤ずきんくんと狼くんとが想いあっているように、僕も狐くんが好き。
でも、守られるだけの軟弱な僕は、あの二人のようにはいかない。
この想いは、狐くんにはけっして伝わらない。
それどころか、この想いを知られれば気味悪がられるだけだろう。
あらためて思い知ると、息苦しくて、悲しくて、目頭が熱くなる。
涙が込み上げてくる。
そりゃね、狼くんは優しい。
どんなに傷を負わせてもやり返してこない。
だけど、僕が好きなのは、狼くんじゃなくて……。
「僕、僕は……」
「うるさいっ」
ふたたび口をひらけば、僕は突然胸を押され、芝生の上に押し倒された。
「こ、くっ、んぅ、っ!!」
どうしたの?
そう言おうとしたら、口が塞がれた。
僕は、狐くんに、キスされてるんだ。
なんで?
どうしてこんなことになったの?
たしかに、僕は狐くんのことは好きだ。
だけど狐くんは違う。
僕のことを好きでもなんでもない。
狐くんは僕のことを、ただ単に狼くんをいじめる仲間としか認識してないでしょう?
……いやだ。
こんなの、望んでない!!
僕を黙らせるためにキスをするなんて……イヤだよ。
「んっ、やっ、狐くんっ!」
ふいっと顔を背けて両手で狐くんの胸を押す。
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