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「関係の始まり」

 オレ、北条雅己(ほうじょう まさみ)にとって、杉森 啓介(すぎもり けいすけ)は、一番大好きな友達だった。  高校1年の時に、啓介が大阪から転校してきて、バスケ部に入ってきた。気が合って、話すのも楽しくて、一緒にバスケするの楽しすぎて。  大好きな部活仲間で、大好きな親友、だった。  付属校だったので、そのまま推薦で進学したから大学も一緒。  選んだ学部も一緒。  ずっとずっと、仲良くしていくんだと、思っていた。  ――――……でも。  大学に入って少ししてから、突然。  啓介がオレに「愛の告白」を始めた。  「雅己が好き」「オレと付き合うて」「オレを好きになって」  「ずっと一緒に居たい」  とにかく、いっぱい、言われた。   何なんだ、何の冗談なんだ。  超カッコイイと、女にモテモテで、高校の時も何人か女の子と付き合ってたし、大学に入ってからも、合コンとかで女の子と消えるとか、オレの前で平気でしてたくせに。  最初は、ほんとに、冗談だと思っていたら。  啓介は付き合いのあった女の子と手を切ったみたいで、その上で、何度も何度も迫られて。 「雅己が居らんなら、生きてても意味ないて思う位、お前が好き」  オレは、この言葉に、落ちた。  落ちたって、別に、その瞬間に、惚れた、とかじゃない。  ……生きてても意味ないとか。  そんな大げさな、と思いながらも。  あんな真剣な顔して、そんな事言われたら。  啓介に、向き合わざるを得なかったと、いうか。    ……だって、オレ、啓介の事が大好きだったから。  ――――……それはもちろん、友達としてだったけど。  でも、「啓介」という人間が、大好きで。  断って、離れる事になったら嫌だと、思ってしまったから。  まあ、啓介への返事としては、投げやり感は半端なくて。 「もう分かった、好きだっていうのは分かった」  と何度も言ってる内に。 「ああ、もう分かったってば! とりあえず付き合ってみればいいんだろ!」  オレは、ある時、そう叫んでいた。  とりあえず、付き合う。  そんな投げやりな、告白の受け方あるのかと、自分でも思う。  言った瞬間、あ、怒るかな?と思ったけど。  何でだか、啓介は、めちゃくちゃ嬉しそうで。   「ん。最初はとりあえずでええよ。その分、オレがめっちゃ好きやから」  ……ほんとに。  調子、狂わされるにも、程がある。    こんな「恋人」の始まりって。あり?  と思っていたけど。  その内、啓介、目が覚めて、元に戻ってくれるかな?とも思ったし。  ちょっとそれを期待しつつ、試してみよう的な感じでオレは受け入れた。  なのに。  ――――……ほんとに、あれよあれよと。  キスされて。  触れられて。  訳が分からなくなってる内に、関係を、もってしまうとか。  信じられない気がする。  その関係ももう、何度も持ってると、少し慣れてきて。  ――――……でも、夜中に起きると、謎すぎて、悩む。  なんで啓介とこんな事して、一緒に寝てるの、オレ。  いつも、そう思ってしまう。  とりあえず付き合う、なんて言ったけど、  この状況は、もはや、とりあえず、なんかじゃないし。  キスされて、抱かれて。  ――――……もう、完全に、啓介の思うままに、なってる気がして。  正直、流されまくってる気がして、  こんなんで良いのか、めちゃくちゃ、困ってるし。    高校時代さかのぼって考えて、オレと楽しく一緒に居ながら、オレを抱きたいとかそんな風に思ってたのかなと、ふと思ったら。今更ながらに、焦る。  だって、そんな事、オレ、知らなかったから、  ――――……結構な近距離でいつも過ごしてきてしまった。  ずっと側に居たし、何気なく、触れ合ってた。  啓介が一番仲良くて。  啓介の事が一番好きだったから、絶対オレ、距離、近かったとも、思うし。  それら全てとは言わないと思うけど、そのどこかに、啓介は反応してたんだろうか。もうはっきり言って、全然自覚がなくて分からない。  でも、高校の時からずっと気になってた、と言うのだから、そうなのかな、 と思う。  オレが――――……無意識に、何かのスイッチ、押してたのかな……。  全然、分かんないけど。うう。

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