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「やさしいケダモノ 」2※

 すると、啓介が ふ、と笑んだ気配。 「――――……雅己、可愛え」  囁かれて、何か言い返したくてたまらない。  けれど、その言葉と同時に激しくなる啓介の手の動きに、もうどうにもこうにも――――……何も、言えなくなってしまって。 「……ッ……」  さっきだって、散々触れられたのに――――……。  何で反応すんだよ、オレの馬鹿。 「……っあ…………っく……」  ――――……しかた、ない。  オレは、健康な、男なんだ。  触られれば、反応するのは、もうこれはどうしようもない。  そうだ、こんなの――――……ただの……。  そう、生理的な、ものなんだから。  ……仕方ない。 「あッ……ん、く……」  身体が勝手に大きく震える。  啓介の手で、いいようにされて、またイかされてしまった。 「――――……」  気が遠くなる位の感覚。  啓介の手って、悔しいけど、めちゃめちゃ、気持ちいい。  男同士だから? だから、気持ちいいとこ、分かっちゃうんだろうか。  最初はそうも思ったけれど。  ……オレは啓介の気持ちいいトコなんて、分かんねーし。  やった事ないけど、そんなに、ちゃんと出来る気はしないし。  なんでこんなに、うまいんだ。 「……っ……」  不意に後ろに指が触れて。  また、焦る。  何度目かだけど、これだけは、やっぱり慣れない。  ……慣れてたまるかーー!! 「啓介、ちょっ……待っ……」  指がものすごくゆっくりと、中に入り込んでくる。 「………………っあ」  どんなにゆっくりされたって、これだけは……。 「……痛くないやろ? まだ中やらかいし」 「…………っ」  ぷるぷるぷる。首を横に振る。  中、擦られて、あ、とのけ反る。  ダメ、だ。  そこ、やなんだってば――――……。  かあっと、顔と体が、熱くなる。 「……は………っん…」  堪えきれなくて、声が漏れて。  啓介の手に耐えてると。  目の前の啓介の顔が、余裕のない顔に変わってって。  何されるか、当然、もう、分かってるのに。  ぞく、と背筋に、強い感覚が走る。 「――――……っん、ぅ……」  唇がまた深く塞がれて。めちゃくちゃにキスされる。  きつく瞳を閉じて、それに応えるしか、出来ない。  優しいんだか苦しいんだか分からない、熱いキスに、頭に靄がかかるみたいに、意識がどんどん白くなっていく。  そしてそして。   何でか、後ろの感覚がどんどん、やばくなってって。 「……ぁ……んっ……」  ひたすら朦朧とした意識の中、オレにキスしてる啓介を見つめた。  気配で気づいたのか、瞳を開けた啓介と視線が絡む。  その時の啓介の、瞳。 「……っ……」  何でこんな、優しい瞳、するんだろう。  ただ、そう思ってしまう。  ――――……こいつが、オレを好きだというのは、  きっと本当なんだろうな、と、こんな時、思ってしまう。 「……雅己」  優しく、囁く声。  耳元で声を出されると、ゾクゾクして、たまらなくなる。  オレは朦朧とする意識の中で、抵抗する事も叶わず。  それどころか、抵抗しようとする気持ちさえ消え去っていって。  結局。今夜も。  この優しいフリしたケダモノの、言いなりに、なってしまった。

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