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「やさしいケダモノ 」1※

「……っ……」  ――――……啓介のキス……嫌い。 「……ん、ん、っ……」  いつの間にか、背はベッドに沈んでいて。  舌が、息が、やたら、熱い。  正直、こういう類の事が、完全に初めてなので。  啓介のキスがうまいかどうかは、誰かとは比べられない。  のだけれど。  抵抗しよう、あわよくば逃げよう、と思ってるのに、  捕らえられて、離れる事もできず、力も思考も奪われてしまうのだから。  うまいんだろうな……とは、思う。  啓介のキス、初めてされた時は驚いたけど。嫌ではなくて。  え、どうしようと思っている間に……だんだん深くなって。熱くなって。  最初から、翻弄されまくりで。    今も、気持ち良ければ良いほどに、なんか、悔しくて。  このキス、嫌い、て思ってしまう。 「……んン、う……」  角度を変えられたり、キスの仕方を変えられるたびに、勝手に漏れる自分の声が、自分の声じゃないみたいで恥ずかしい。  でも、だけど。  口が塞がれてて、満足に息も出来なくて、何とか息をしようと藻掻くと舌が絡められる。そんな時に出る声は、どうしたってくぐもってしまうし、まともな言葉が出てくる訳もないし。  ――――……だからこれは、仕方ないと、そう思う事にしてる。 「……ン、ぁ……っふ……」  はっ。違う。  ……違う、違う違う。  そんな妙な諦めを打つよりも何よりも、やめさせなければ。 「ちょ……待って……」  何でだか力の入らない手で、啓介を押しのけようと藻掻くが、啓介は、喉の奥で低く笑うだけ。  手首を捕らえられて、ベッドに軽く押さえられた。 「……っ……ん、ぅ……」  更に深く舌を絡め取られて、また声が、漏れてしまう。  ――――……ちく、しょ……。  さっきだって、散々人の事いじくってたくせに、まだやる気かよ。  そう思うのに、押し返せない。  別に、ひどく押さえつけられている訳ではない。  力ずくで、無理やりされてる訳ではない、のに。  あれ?……じゃあ何で、オレはやめさせられない……?  働かない頭で、ごちゃごちゃ考えていると。 「……っあ……!」  不意打ちだったせいで、啓介との唇の隙間で、声が、勝手に漏れた。  啓介の手が、オレの胸に這って、乳首に触れた。  ぞくっとした感覚に勝手に体が震える。 「ちょ……やめ……」 「ん?」 「……っん、じゃねぇよっ……やめろって」 「――――……んー……けどなぁ……?」  啓介の奴、またクスクス笑うと、あろう事か――――……。  今度は手が前に回って。反応しかけてたオレのそれを、遠慮もなく、握りこんできた。 「……や……ッ!」  びっくりして、また声が出てしまった。 「雅己のここは、して欲しそうやけど?」 「……あ……ッや……」  して欲しそう、じゃねえよっ。  ……っお前が、変な風に、触るから、ますます……っ。 「――――……このまましてもええ……?」 「――――……っ」  優しく囁くけど。  その手は、無理矢理、望む答えを引き出そうと、強引に触れてくる。  オレのそれは、触れられて弱い所を刺激されると――――……。 「……ん……っ」  その感覚を、どうにもできなくて。  顔を見られないように、きつくきつく、啓介の首にしがみつく。

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