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「あれれ?」2

「ああ……悪い」  啓介は、こんな場面なのに、何だか可笑しそうにクスッと笑った。  何だか余裕があるみたいに感じて、また少しムカつく。 「最近こういう状況なかったから、ピンとこなかったわ」  ……最近?  …………最近。……まあ、そっか。  オレに迫ってくる迄は、遊んでたんだもんな……。 「その感じだと、遊ぶのやめたって本当なの?」 「ああ……やめにした」 「ふーん。何で?啓介に彼女出来たって噂も聞かないけどな」 「まあ、今も彼女は居てないんやけど……好きな奴はずっと居ったんや」 「え」  ちょっと驚いたような水野の反応。 「啓介、好きな人居たんだ?」 「居るよ」 「ずっとなの?」 「そ。ずっと好きやったんやけど……絶対無理やと諦めてたんやけどな」 「今はうまくいきそうなの?」  その質問に、今までぽんぽん答えていた啓介の返事が少し詰まった。 「んー。どうやろな。前よりはええかもしれんけど。まだ分からんな。でも、諦めるのはもうやめた。ほんまにあいつの事好きやから」 「――――……」  すっ、と。  もやもやしてた感情が晴れた。  そして。   ふわりと、嬉しいような、照れくさいような。  よく分からない、感情に心を支配される。  あれ。  …………オレ、何で喜んでるのかな。 「なんか啓介らしくない」  言って水野が笑った。 「オレらしいって何やねんな」  啓介が苦笑いする気配。 「……軽くないんだもん」 「アホか。オレ、ほんまは一途なんやて」  水野はそれを聞いておかしそうに笑った。 「ふーん。知らなかった」 「なら覚えといて」 「はあい」  クスクス笑った後、水野は、ふう、と吐息を漏らす。 「そっかー。な~んだ。彼氏と別れたから、憂さ晴らしさせてもらおうと思ったのに」 「また別れたん?またフッたんやろ、お前」 「色々あったのよ、またとか言わないでくれる?」  今度は水野が苦笑いする気配。 「水野もほんまに好きな奴見つけろや」 「んーー? 啓介に言われたくないけど。そうね。考えてみよっかな」  啓介はクスクス笑った。 「せっかくエエ女なんやから。安売りしてたら勿体ないやろ」 「あら、失礼よ、啓介。あたし安売りなんかしてないから。こんな風に誘うの啓介だけだし?」 「そおなん? ……ならごめんな、もう誘いには乗ってやれんわ」 「うん、もー分かった。 私も啓介誘わないで済むように、早くいい男さがすわ」  内容的には結構すごい会話だと思うんだが、2人はあっけらかんとして笑っていた。 「あ、じゃあ、お昼食べなきゃだし。もう行くね! 今度また飲みにいこ、もちろんさっきのお誘いはなしで♪」 「ああ、ええよ。そんならいつでも。……て、良いか聞いてから、かな」 「ええ、なに? 飲みに行くのもダメなの?」 「誤解させたくないんや。 ただでさえ、まだまだどーなるか分からんし」 「ほんとに好きなんだね。いいなあ、啓介にそんなに思われる人」 「そおか? 当の本人はどう思ってるか、分からんけどな」 「そうなんだ?どんな人なの? 見てみたいなー」 「んー。いつかな……」 「うん、じゃあ、いつかね」  笑う啓介に、水野も笑う。 「じゃ、またねっ」  水野が立ち去って行く足音。  そして、ふ、と啓介が軽く息をつくのが、聞こえた。  結局、全部丸々聞いてしまった。  ……気まずい。気まずすぎる。    どうしよう。  出ていく? ……逃げる? いや、逃げるの変か。  ……出ていく?  どうしよう。  迷っていると、啓介が、こっちに近づいてくる気配がした。

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