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「バスケの皆と」1

「な、雅己、今日バスケしにいく?」  朝起きたら、珍しく、超健康的な事を言われた。 「え、バスケ?どこで?」 「近くの体育館、バスケのコートがあるって。 |要《かなめ》たちがコート取ってくれたて、連絡入ってきた」 「え、ほんと? 何時から?」 「10時やて」 「行く行く! シャワー浴びてくる!」 「パン焼いとくなー」 「うん!」  下着しか身に着けてなかったけど、もうそのままダッシュでバスルームに向かう。  要は、高校のバスケ部の仲間。  要たち、てことは、そこの奴らが何人か居るに違いない。  やったー、バスケ、したかったんだよなー。  シャワーを出して、ざっと浴びる。  昨日、何だか良く分かんない事を考えてたから、寝不足な気がする。  シャワーを浴び終えて、ドライヤーを適当にかける。 「なあ、啓介、バスケのウェアー、家に取りに行ってほしいんだけど」 「ええよ。バイクでいこ」 「うん」  目玉焼きが乗ったトーストと、牛乳がもう準備できていたので、啓介の前に座って、頂きます、と食べ始める。 「めっちゃ嬉しそうやな、雅己」 「だってバスケ久しぶりじゃね? すごい楽しみ。誰が来るって?」 「お前のスマホにも連絡入ってんで? どこにあるん?」 「昨日夜、見ないで寝ちゃったけど……あ、ローテーブルにある」 「ああ」  啓介が立ち上がって、渡してくれる。 「昨日から入ってたんだ。全然見ないで寝ちゃったから……」  ってそもそも誰のせいだ……。と思うけれど、そこはもう触れず。 「結構皆来るんだな。楽しみ」  ものすごくウキウキしてると、啓介がぷ、と笑った。 「浮かれすぎ。 久しぶりなんやから、ケガしないように……」 「ちゃんと準備運動してからやるって」  過保護な啓介の、母親みたいな台詞を遮って、オレは言った。  はいはい、と笑われた。 ◇ ◇ ◇ ◇  手から離れたボールが、しゅ、と音を立ててゴールに吸い込まれた。 「雅己なーいす!」 「すげーじゃん、3ポイント健在!」  同じチームの皆に抱き付かれ、やったー!と喜ぶ。  楽しすぎる。  啓介とは別のチームになった。同学年と下の学年の後輩たちまで、結構な人数が集まったので、3チームできて、啓介のチームは、今休憩中。  スリーポイント決めたぞー、と思って、啓介を振り返る。  啓介は、コートの端に座って、試合を見学していたのだけれど、オレの視線にすぐ気が付いて、ふ、と笑って、親指を立ててくれた。  すぐ、試合の方に視線を戻そうとした時。  啓介の隣に、女の子が座った。  1コ下のマネージャー。  2人、楽しそうに、話し始める。  少し、割り切れないモヤモヤを感じたまま、試合に戻る。  試合、楽しい。バスケ、久しぶり、楽しい。 「――――……」  なのに。  女子と楽しそうに話してる、啓介。  なんか、少し、ムカムカする。  そういえば高校の部活ん時もいっつも啓介の周りに居たっけ。  結局付き合ってなかったの、かなあ…?  うーんでも、付き合った彼女、全員は把握してないしな。  ……オレは、バスケとかで忙しすぎて、とても女子とどーにかとか思えなかったから、啓介ってほんとすごいなーと思ってたけど。  その後、その啓介がオレに来るなんて、思わなかったけど。 「――――……雅己!」 「え。あっ……!」  一瞬ぼーっとしてて。パスを取り切れず。  ――――……取られてしまった。 「あ、ごめん!」  慌てて追いかける。  ちょうど、場所が啓介の前だったせいで。 「ぼーっとしてんなやー!」  なんて、檄を飛ばされる。  くっそ。  ……良く分かんねえけど、お前のせいだけどな。  ダッシュで追いかけて、パスをカットして奪い返して、味方にロングパス。  出すとともに、攻めに転じて、駆け出す。  猛スピードで駆け抜けて、パス貰って、シュート。  決まった所でゲームが終わった。 「雅己、絶好調ー」 「ほんとすばしっこいのかわんねえな」  皆に褒められ、超いい気分。  15分休憩を入れて、今の試合の勝った方、つまりオレ達のチームと、啓介の居るチームが試合をする事になった。  大学の付属の高校だけど、全員が進む訳じゃないので、なかなか会えない奴らも居て、ほんと、久しぶりで楽しい。  近況報告しあっているだけで、どんどん時間が過ぎていく。 「そういや啓介って、結構長い事彼女居ないんだって?」  急に|要《かなめ》がそんな風に言い出した。  大学同じ奴らが、「そうみたいだな」「彼女しばらく作ってないかも。聞かないし、見ないし」なんて言ってて。 「ほんとに居ないの?」  要が直接オレに聞いてくる。 「…何でオレに聞くの」 「だって、雅己が一番啓介と仲良いじゃん」 「――――…居ないみたいだけど……」 「ふーん。……じゃあ、今チャンスなのかな」 「?」 「若菜ちゃんさ。今もずーっと啓介のこと好きらしいから」 「あ、やっぱりそうなんだ」 「可愛いし、良い子だし、いいじゃんな」  若菜、て名前だった。 そうだった、思い出した。  ずっとマネージャー、で呼んでたから……。  ていうか、オレ、ほんとに女の子に興味なかったな……。 「今日会った時からずっと、啓介の隣に居るもんなー」  ……あ、そうなんだ。   全然見てなかった。さっき試合中からかと思ってた。  ……ふうん。 「啓介って来るもの拒まずだったよな。とりあえず付き合ってから決める、みたいな」 「いいよなー、あいつ、ほんとモテるし。なんでだ?」 「……何でって――――……まずルックスじゃねえの? あと話もうまいっつーか。さりげなく女子にやさしいっつーか…」 「分かる。あいつと同じクラスだった時、こうすればモテんのか、って、何回か思ったけど……真似は出来なかったな」  そんな事を言いながら、皆、笑ってる。  ………なんかむかつく。  今こうしてる時も、若菜は啓介の隣に居る。  楽しそうに笑ってる、可愛い笑顔。 仕草も可愛い。  うん、確かに、可愛い子だな。  ――――……いいな、啓介は、ほんとモテて。  ――――………………なんで、こんなに、むかつくかな。  

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