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「バスケの皆と」6
トイレから戻ると。
啓介が、居なかった。
「……啓介は?」
聞いたら、「何か用事があるからって、帰ったよ」と言われ。
少しほっとしたのと。
――――……置いてかれたと思うのと。
若菜は居るから、連れて帰ったとかじゃないのは良かったけど。
とか咄嗟に思って。
……そこ何で気にするかな、オレ。とまた思ったりして。
はー。
…………なんか、初めて、あんなに怒られたかも。
付き合う前も、付き合った後も。
――――……何であんなに、怒ったんだろ。
「なーかなめー」
「ん??どした?」
トイレに行ってる間に来てたプリンを口にいれつつ。
隣の要を呼んだ。
「なー、オレ、さっきさ、良にマッサージしてもらってたじゃん」
「……ん、それが?」
「たとえばさー、お前の付き合ってる女の子がさ、男にマッサージされてたら、嫌だよな?」
「……当たり前じゃん」
「女の子にマッサージされてても嫌??」
「……嫌な理由がわからねえけど」
「――――……だよなー……オレが良にマッサージされてるのってさ、別に普通だよな?」
「普通なんじゃない? ていうか、お前昔からよく良に揉んでもらってたじゃん」
「そうだよね」
そうなんだよね。
あいつマッサージうまいから……酷使した日とか……。
前からだよなー……。
……何で急にあんなに怒るかな。
「なにが聞きたいんだかわかんねえな。どういうこと?」
「……オレも良く分かんね」
なんだよそれ、と要は笑ってる。
「……まあでも、付き合ってる人がいるなら、触らせない方がいいんじゃない?」
「……そーなの?」
「付き合ってる人が、何が嫌か分かんないじゃん? 体触るってさ、微妙なとこなんじゃない?」
「うーん」
「……何、さっき良にマッサージされて何かあった?」
「いや。ない。」
あるなんて言ったらこのメンバーの中で何かある事になってしまう。
即座に、頑なに、無いと言い張ってやり過ごす。
「気になっただけ?」
「うん。そう」
………なんだかな。
もう。
……何が嫌なのか、まだ良く分からない。
――――……何かが、啓介は嫌だった、ってことは。
……もう、分かってるけど。
これって、オレが悪いの??
……くそー。もとはといえば、お前が、若菜と仲良くしてたから、バイクも乗らず、隣にも座らず……。
でも……帰っちゃうって、相当だよな……。
あんなに怒ったのが初というよりも、まじめに怒られた事自体が初めてかも…。
啓介っていつもふわふわしてて。
ちょっと文句とか、ちょっと怒ったふりとか。そんなのはいっぱいあったけど。 あんな真剣な顔して、あんな風に、もう知らんみたいな、そんなの全然無かったから。
モヤモヤしつつも、皆と最後まで過ごして、店の前で皆と別れた。
……はー。どうしよう。
と思うのだけれど。
――――……こんなんで、家に帰れる訳ない。
「――――……」
スマホを、出して。
啓介との画面を開く。
「今皆と別れた。店の前らへんで待ってるから、来て」
そう、入れた。
既読、つかない。
怒ってたから見てくんないのかな。
――――……もし来てくれなかったら、いつになったら帰ろうかな。
1時間待って、来なかったら。帰ろうかな……。
はー。とため息。
――――……こんなんで、オレらって、あっけなく、こうなんの。
今朝まで、超、一緒に居たのにさ。
――――……啓介のあほたれ。ばかたれ。
いっつも余裕な顔して、迫ってきて、オレの中をぐちゃぐちゃにして。
そんなにしといて、こんなあっけなく、離れんの?
――――……やっぱり、ずっと、友達でいられたら良かったのに。
何も、変なコト、考えなかったし。
こんな類の、喧嘩もなかったし。
――――……啓介に対して、嫌な事なんか思う事もなくて、
ただ、啓介と居るのが楽しくて、好きだった。
ほんとに、楽しかったのに。
――――……。
友達のままで居られてたら――――……。
抱き締められて、キスされて、訳が分からなくなったりも、しなかった。
このまま、離れる事になったら。
啓介はまた、女の子、とっかえひっかえ、付き合うのかな。
それか今度こそ、1人の女の子と、ずっと付き合うように、なるのかな。
そん時、オレって、どうするんだろう。
友達に戻れるのかな……?
……腕の中で寝るとか。
もう、無いのかな……。
まあ、友達なら、無いか。
――――……別に良いんだけど。
良いんだけど、さ。
……ふー、とため息。
その時。
ぴこん、とメッセージ受信。
「すぐ行く。待ってて」
そのメッセージに。
――――……心底、ほっと、したのが。
自分でも、謎。
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