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「キス」2

 起こさないようにと、また最大限に静かに部屋を出ようと、啓介に背を向けた瞬間だった。 「……まさみ?」  びく!と大きく震えたのが自分で分かる。振り返ると、啓介がゆっくり体を起こしてて。思わずため息をついてしまう。 「……何で、起きんの。オレ、超静かにしてたのに」 「んー……気配……?」    クス、と笑いながら、啓介が、おいで、とベッドを叩く。そこにすとん、と腰かけて。   「……ごめん、寝てたのに」 「全然ええよ。……様子見にきてくれたんやろ?」  そんな風に言って、優しく、笑う。 「具合悪ぃ?」 「全然。ちょっとウトウトしとっただけ」 「そっか……」  でもこんな昼間っから、お前がうとうとするって事は、やっぱり体調悪いって事、だよな……。 「――――……?」  啓介が、そっと、オレの頬に触れた。 「どうかしたん?」 「……どうもしないけど?」 「……ああ、オレが構わんから寂しい、とか?」  そんな言葉に、ちょっと…… いや、かなり、ムッとして。   「……んな訳ないし。オレ、リビングに居るから、何かあったら、呼んで」 「――――……」  立ち上がろうとしたオレの手を、啓介は不意につかんで、ぐい、と引いた。  ベッドに座ってる啓介の胸の上に、倒れ込むような感じで、抱き締められる。 「……っ……」 「……ほんまに寂しいんか?」 「だから……寂しくなんかないって。離せよっ」 「堪忍な。ほんまだったら、ここで押し倒して、めちゃくちゃ可愛がりたいんやけどなー……」  髪をクシャクシャにされながら、よしよし、と撫でられる。  つか、そんな事してって言ってないし。ほんとにもう。 「――――……めっちゃキスしたい……」  また、唇に、指で、触れてくる。  あぁもう。 マジで、お前、それやめろって。キスする気ないなら、むやみに人の唇なぞってくんな。いつもキスされ過ぎてて、そんな風に触られるだけで、ゾクゾクするっつーのに……っ。  もう、ここまでくると、怒りすら湧いてきて。 「――――……っ」  その怒りの勢いのまま、啓介に、キス、してしまった。 「――――……」  唇を重ねて、少しして離して、近距離のまま、啓介を見上げる。 「……お前は、人が、我慢してんのに、何しとんの」  啓介は、眉を寄せて。そんな風に言う。  キスしてこんな顔されたの初めて。こっちまで自然と仏頂面になってしまう。 「……別に朝も一緒に寝てたし、うつるなら、もううつってるし」 「――――……せやから?」 「――――……」 「せやから、なに? キスしてもええ、て言うてんの?」 「――――……」  そんな質問に、オレが答えられるかどうか、絶対知ってるくせに。  わざと言わせようとしてくる啓介に、ほんとに、腹が立つ。 「……キスしてほしいん?」  啓介の瞳が、からかうように笑んで、じっと見つめてくる。 「――――……言うてみ?」 「……っ……したいなら、すれば、いいじゃん……」 「――――……」  啓介は、一瞬黙って、それから、クッと笑いだした。 「ほんまお前は――――……」  言いながら笑って、そのまま、ちゅ、とキスされる。 「――――……もっとしてもええの?」 「……」  なんか、聞きながら進むみたいな、それがもどかしくて。  黙ったまま首に腕を回した。

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