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「1秒で」※

「……やめ……あ…… あ、ぅっ……」  脚を閉じてしまいたいのに、押さえつけられていてびくともしない。  いつもなら抵抗して動かす手も、くくられていて、動かせない。  腰を退いても、意味がない。  なめられて、絡められて、吸われる。  深く啓介の口内に引き込まれて、扱かれる。 「……っ……んう ……ンン……!」  めちゃくちゃ吸い上げられて、気が遠くなる。   「……も、や、だ……っ」  言った瞬間、啓介が口を離して、ほっとしたのも束の間、激しく扱かれて、仰け反ると同時に、達してしまう。 「……んっあ……っ……っふ……」    快感が強すぎて――――……終わっても、体が震えたまま。  ちゅ、と頬にキスされて。  それから、唇に、キス、しようとした啓介から、思い切り顔を背けた。 「雅己?」 「――――……っ腕、と、れよっ」 「んー……? とらなきゃあかん? もー少しこのまましたいんやけど」 「っとんなかったら……」 「うん。とんなかったら?」 「……も、別れる……」 「え」 「……こ、なの、やだ」  ぼろ、と堪えられずに涙が零れ落ちて。  上がった息を噛みしめて、啓介を睨んだ。 「っわーた。今取るから。すこし後ろ向いて」  言われて、啓介に少し背を向けると、そっと、解いてから、両手をさすりつつ、きゅ、と握ってくる。 「……ごめんな、雅己。泣かんで」  よしよし、と撫でられて、抱き寄せられる。 「……そんな嫌やと思わんかった」 「……やに決まってんじゃんか」 「んー……オレ的には、抵抗されへんから、たまにはえーな、位やった」 「抵抗できないのムカつくし、それに……」 「――――……それに、なに?」 「………」 「……雅己? それに、何や?」 「……お前につかまれない、し」 「つかまれない?」 「……っいっつもオレ、お前につかまってどーにかしてんのに、それもできないなんて……もう、絶対やだからな! 今度したら、もう、1秒で別れるからな!!!」 「――――……1秒て……」  少し黙ってた啓介が、ぷ、と吹き出して。 「……オレに、つかまれなかったんが、嫌やってん?」 「……っだからそうだって、言ってんだろ、何度も言わすなよ、このバ……」 「――――……」  そこで、唇が奪われて。全部は言えなかったけれど、今度は顔を背けず、そのキスを受ける。  腕を啓介の背中に回して、ぎゅ、と抱き付いたら。  啓介が、唇の間で、クスクス笑った。 「――――……こうしたかったん?」 「……っ……うるさ……」  ふ、と笑った啓介に、また唇を塞がれる。 「――――……せやけど、ちょっとの間抵抗なかったん、めっちゃよかったなー」  啓介がクスクス笑いながら、雅己を見つめる。 「ほんまはいつもこっちなめてやりたいんやけど、お前めっちゃ抵抗するからなー……」 「だって、舐められんの、嫌いだし」 「……ちゃうやろ。 気持ちよすぎて、嫌なだけやろ。 せやから、慣れろって言うてんのにな」 「……っ……訳わかんなくなるから、嫌いなんだよっ!!」 「はー…… もうちょっと、素直に受けような、雅己?」 「……絶対、無理」  ぐい、と押しのけると。啓介は、苦笑い。 「ほら。この腕、やっぱ、いらんくない?」 「……今度縛ったら、ほんとに別れる」  突っ張った腕をそっと避けながら、啓介が笑う。 「――――……そんな嫌やってん?」 「……やだよ! なんか、何も隠せないし、全部丸見えみたいで、もうそれだけでも、やだ」  さっきから、言えば言うほど、啓介が、笑う。 「っ何でお前は、人が嫌だって言ってんのに、さっきからずっと笑ってんだよ!! もーほんと、嫌い、離せよっ」 「堪忍……――――…… ていうてもなあ……」  啓介は、ふ、と笑いながら、 「抵抗できないのが嫌やて言うんは分かるけど…… 抱き付きたいのにできないとか、全部見えて隠せないから恥ずかしいとか。めっちゃ可愛ぇんやもん」  そら、笑うやろ?と、見つめられて。  短くまとめられるとすごい恥ずかしい事を言ったような気がして。  カッと、熱くなる。 「……今の無しにして」 「は? 無理やな。 もう全部聞いたし」 「……ッ」  だめだもう。今何を口走るか、わかんねえ。  ……ほんとやだ。 「――――……続きしよ。雅己が、してほしい事言うてくれたら、何でもしたるから、思いついたら、言うて」 「――――……っ……」 「抱き付いててもええし、隠してもええし。……もう、抵抗してもええよ」 「――――……」  頬に触れながら、至近距離で見つめられる。 「縛って泣かせてしもたし。 お詫びに、めっちゃ気持ちようしたるな」 「――――……っ」  ふ、と笑った啓介は。また色っぽくなって。  ドキドキさせられるのが、悔しい。 「……っつか詫びなんて、いらな――――……」 「遠慮すなや」  言った啓介に、肩を押されて、枕に背を沈められて。  重なってきた唇に、なすすべもなく、瞳を伏せた。

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