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「頑張る」

 オレから、深く重ねて、キス、したのに。  啓介は、でも、それ以上は、触れて、こない。  これは、もしかして、まだ……。 「――――……」  もう。……オレ、もう、お前と居るって言ったのに。  オレのあの「お願い」に、引っかかってるってこと……?? 「……っもう、いいよ、ちゃんとキスして」 「……もうええの?」 「……だから……っいいってば」  言うと。啓介は、じっとオレを見つめる。 「キス許すなら、その先も許せや」 「――――……」  はー……ほんとに……。 「……もう、良いって、言ってんじゃん……」  オレは、啓介を見上げて。   再び、キスして、舌で啓介の舌をなめてみた。  のに。  なんと、引き離された。  く。  こいつ……。 「――――……抱かれるん、何で嫌やった?」  で、その質問。  ……嫌がった理由、言わないと、しないって事か……。 「……嫌だったっていうか……お前、きっとオレとは居なくなんのに……」 「――――……それ、もう思うなや?」  少し眉が寄る啓介に、じっと見つめられて、小さく頷く。 「……でも何かオレ、多分ずっとそう思ってたのに……普通にお前と、したいなって思っちゃって……」  そう言ったら、啓介が「は?」と首を傾げた。 「……なんか、勝手に、する時の事考えて、やばかったりして……してても、気持ち良すぎて怖かったし……」 「――――……何やそれ。 嫌んなってた訳ちゃうん?」 「……だから、意味分かんなくなってくのは、嫌だった」 「――――……それは、嫌っちゅうんやないやろ」  言われて、口を噤む。   「……で…… オレ、こんなんで女の子と出来るのかなーって思ったし」 「何で女?」  啓介が即座に、低い声で言う。 「啓介が女の子に戻るならだけど……いつか戻ると思ってたし……。オレ、お前以外の男なんて絶対無理だから、啓介以外とってなるなら絶対女の子だし。でも、こんなままで大丈夫かなあと思ったし……」 「――――……」  啓介の事、好きではあるけど、未来までは信じてなくて、きっと女子に戻ると思ってて。だから、あんまり気持ちよく抱かれ過ぎて、それだけになるのが、嫌だった。……としか、思えない。  あんまり気持ち良い事、オレにこれ以上、教えないで欲しかったし。 「アホやな、雅己」 「――――……」 「……オレ、お前離さんから、そんな心配しなくてええよ」 「――――……」 「……離してほしく、ないんやろ?」  言われて、啓介を見上げる。  ……そういう事……なのか。オレ。  ――――……じゃあ、お前がオレを離さないなら。  オレは、もう……どうされても、構わない……のかな……。 「オレ、こないだ条件出したやろ?  お前が良いって言うまでしない代わりに、次抱いてええってなった時は――――……もう、嫌ばっかり言わないようにするて。覚えとる?」 「……覚えてる」 「――――……守れる?」 「……」  ……お前がオレを女子と比べたりしなくて……いつかお前が、女子のとこに消えてかないなら。  ……オレ、お前とするのは――――…… 嫌じゃない。   「……嫌だって、言わない……ように頑張る」  言った瞬間。  ふわ、と啓介が、めちゃくちゃ優しく笑った。  その笑顔に、心臓が、どき、と動いた。  ……っ……今更、笑った顔位で。  何で、どきっとするかな。オレ。   「あーもう。ほんま、可愛えな、お前」  ぎゅ、と抱き締められる。  どきっとしてから、ずっと鼓動が早い。

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