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「好きは好き」

 リビングに行くと、啓介が「おかえり」と、笑ってくれた。  朝ごはんがテーブルに並んでる。 「座ってや、雅己」 「うん」 「飯食うたらドライヤーするから」  言いながら、目の前にコーヒーを置いてくれる。 「……ん」  ……だから。  んー。……めちゃくちゃ甘やかすなっつの。 「……いい、自分でやる」 「……ん?」 「……なんか全部やってもらうのやだ」 「……せやから、なんで?」 「何となく……」 「――――……」  ちょっと黙った啓介が。  オレの隣に歩いてきて。  顎、持たれて――――……キスされた。  と。思ったら。 「……っ……ん……?」  いきなり激しいキスに、ぎゅ、と目をつむる。 「っ――――……けいすけ?……なに?……」  唇が離れて。  啓介がクスクス笑った。 「――――……オレ、お前の事、めちゃくちゃ、可愛がりたいから」 「……っ」 「させといて」  言って、頬に優しく、キスしてくる。 「……あんまり、甘やかすと、オレ、動かなくなるぞ」 「――――……ん?」  啓介は、クスクス笑って、目を細めてくる。 「甘やかしすぎると、調子にのって、何もしなくなるけど、いい?」 「――――……んー……そーやなあ……」 「やだろ?」 「……んー。 ……ええよ、そうなっても」  クスクス笑う。 「え、いいの……??」 「ん。ええよ」 「え、そんなのほんとにいいの? やだろ?」 「まあ雅己はそんなの嫌がるから、ならないやろうなーとも思うんやけど」 「……」 「オレが居ないと生きてけないようになるんでもええかなと、今思うた」 「………」 「雅己がなんもせんでも、オレの隣に居てくれるならええかも」 「――――……」  ……うう。……なんか、もういいや。  恥ずかしくなってきた。 「……ご飯食べる」 「ん。座って」  くす、と笑われて、手を離される。 「……いただきます」  なんか腑に落ちないままそう言って、ご飯を食べ始める。  何だか面白そうに、ぷ、と笑いながら、啓介は、オレの向かい側に座る。 「――――……お前、ほんと、おかしい」 「そう?」 「……オレに甘すぎ。……もうオレ、ずっと寝てようかな……」 「んー? ……まあ、ええよ。……その代わり、オレ、お前好きにするから」 「ん?」 「お前が何もしないで寝てるかわりに、オレはお前を好きにさせてもらおうと思て」 「なにそれ?」 「んー。甘やかして、可愛がってやるから、ご褒美に、めちゃくちゃ手ぇ出させてってのはどうや?」 「……朝から、マジで、おかしいからな、お前」  なんでそんな、エロい感じで嬉しそうなの。    冗談なのかな本気なのかな。  ……冗談であってほしいけど。  楽しそうな啓介見てると、本気な気もしてきて。  朝から、甘々でエロい感じの啓介に。   ついていけない。  ……ちゃんと付き合うって決めたけど。  …………遠慮なくこうなると。結構、恥ずかしいし。大変かも……?  黙ってれば超カッコイイのになあ、啓介。  ……って別に喋っててもカッコいいけど。  …………言うこと、とってもおかしいんだよなあ。    じっと見つめてると、ん?とにっこり笑われる。  ――――……まあ。  …………そんなんでも、好きは好きなんだけど。

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