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「夜中に目覚めて」

   ――――……啓介に抱かれて。 そのまま眠って。  夜中に啓介の腕の中で目覚める。  啓介と付き合って。  ――――……何回目だろ……。  んー……オレ――――……。  ……本当に、啓介と居るって決めてから。  ……ほんとに、なすが儘な気がするな。  ……なんか――――……。  好きアピールが遠慮なくなって、激しすぎるのと。  オレを抱いてる時、ますます遠慮がなくなってるのと。  ……なんか、抵抗する術がない。    ――――……さっき。何回、イったんだろう。  啓介が全然イかないで、オレの事ばっか……。  あー……恥ずいな……。  そういえば……と、ふと思い出す。  啓介ってそういえば、性欲そんな強くないとか言ってた事あったな。  ……大ウソつきすぎなんだけど。  あれ、何の時だったっけ……。  ぼーっとした頭で、一生懸命昔の事、思い出してみる。  ……あぁ。高校ん時だ。  友達が、毎日でもヤりたいとか言ってて、でも彼女に断られるって嘆いてた時だ。  啓介、毎日なんて全然分からんって、言ってたよなーあん時……。  こいつ、今、ほぼ毎日だよな……大ウソつき。  そこまで考えた時。  そっと、肩に、触れられた。 「……雅己?起きた?」 「……オレ、身動きしてないんだけど」 「ん?」 「……何で起きンだよ」 「ああ…… 気配かな……」  クスクス笑って、オレを、抱き締め直す。 「気配って……怖い……」 「何で怖いんや」  啓介が苦笑してる感じ。  ――――……ああ、なんか。こういう笑い方も、ちょっと好きだけど。 「寝てる時と息の仕方、違うやろ」 「――――……怖い」 「せやから何で?」  今度はおかしそうに、クスクス笑う。 「……なぁ、オレ今思い出したんだけど。お前さあ」 「うん?」 「前、毎日ヤんのなんてありえないって言ってたよな?」 「……んー?」 「……性欲強くないとかさ、言ってたよな?」 「……ああ。 言うてたし、思うてた」 「……嘘じゃん。 大嘘つきじゃん」  言うと。少し黙ってから、 ぷ、と啓介は笑って。 「……お前限定で、強いみたい」 「……バカなの、お前。ほんとにバカなの?」  またクッと笑って。  啓介は、オレをぎゅーと、抱き締める。 「今からでも抱けるけど」  え、と啓介の顔を見上げてしまう。 「嘘だろ? 無理」 「すぐイケるで?」 「無理無理……ほんとやめろ」  即答して退いてると、啓介は面白くなさそうな顔をして。  でもすぐ、ぷ、と笑って。 「――――……オレ、それ言うてた時は本気でそう思うてたんよ……」 「……ふーん……」 「……まあ、自分でもこないになるとは思うてなかったけどな……」 「……今はほんとすごすぎだもんな……」 「……雅己だけにやで?」 「……」  そうかなあ。  啓介は、オレが相手じゃなくても、強そうだけど。 「抱くにしても、こないに、ねちっこくはしとらんし」 「――――……」  啓介の言葉に、何秒か止まって。  それから、ぷ、と笑ってしまった。 「ねちっこいって、自分で分かってるんだな」  ……おもしろ。 「……そら、自覚はあるわ」  額に、ちゅー、とキスされる。 「どーやって泣かそうか、どーやって、気持ちええって言わそうかなんて、今まで考えた事もあらへんし」 「……オレにも考えなくていーから。普通にやって」  抱き締められたまま、啓介がくくっと笑って体を揺らす。 「……ンだよ?」 「……普通にはやってええって、普通に言うんやなーと思て」 「……」  確かに。  普通にやって、とか。ほんと普通に言って。  普通に抱かれる事はオッケイしてるし。  ……なんかなー……オレってばなー……。  あまりに普通に受けてた事に、恥ずかしくなってくる。 「……今何時?」 「んー……ちょおまって……」  啓介が手を伸ばして、頭の上にあったスマホをつけた。 「2時すぎやな」 「――――……寝よーぜ、啓介」  すぽ、と啓介の胸にはまったまま、目をつむる。 「――――……おやすみ、雅己」  くす、と笑った啓介が、髪の毛にちゅーちゅーキスしてる。 「……やめろっつの……」 「……口にさせて?」 「――――……」  ため息つきつき、上向くと。  口づけて。舌が、ゆっくり絡んでくる。 「……ん――――……」  こういうときの、キスは。  ほんと……やさしーなー……。  うとうと、眠くなってきて。  目を閉じたまま、どんどん力が抜けていく。 「――――……おやすみ」  ふ、と笑った気配がして。  ウトウトしてる中で。最後に、頬にキスされた気がした。

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