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「惚れた弱み?」

 そう思った所で、あ、と気付く。  そういえば、オレ、ゴムって……つけた事ないな。  いつか女の子と付き合って、そういう事が起こりそうになったら買えばいいやと思っていたから、買った事もなく。誰かに使う予定がないのに、買うほどの興味も、全然なかったし。  そういや、高校ん時、つける練習するとか言ってた奴らも居たっけなあ。  啓介が箱を開けてるのを見ながら、ぼんやりそんな事を思っていたら。 「ん? 雅己もつける?」 「……え?」 「つけてみたい?」 「な、なにいってんの、そんな事、言ってないじゃん」 「何やめっちゃ見てたし。ぼーとしてるから」 「っ……いらないって……」  どうせオレ、つけたって使わないじゃん。 「ここでするなら、雅己も付けてた方が汚れなくてええかなと思たんやけど」 「――――……」  あ、そうなの? まわりが汚れないようにって、そんな使い方するものなの?  ……いや、しないか。  普通の男はしないだろ。 「……お前オレを騙そうとしてるだろっ」  クックッと笑って。啓介が、よしよし、と頭を撫でてくる。 「オレがお前に入れると、どうしたって、出てまうやろ。つけとけば気にせんでええやん」 「――――……っ!!!」  もう、なんて事、普通の顔で言いやがるんだと、文句を言いたくてしょうがないけれど、言葉にならない。 「――――……これなー、雅己」 「……っ」 「めっちゃ薄いんやて。つけてないみたいて。試してみいひん?」 「……っ……」 「そーいや、つけた事あるん?……経験ないんは知ってるけど。つけた事くらいは――――……」 「……無い。 しないのに、つけねーし」 「……ほんと、お前――――……純粋やな」  可愛ぇなあほんまに……。  なんて言いながら、超ナデナデされる。 「よし、つけ方教えてやろか」 「――――……っ……」 「あ、でも、本来の意味で使こたら、あかんからな」 「――――……っっ」  っっもう!!  ……お前、いい加減にしろよっ!!  すっかりオレに着ける気満々らしい啓介から、ものすごく、逃げたい。  後ろ手についた手で、ずりずり下がってしまう。  こういう時の啓介って、楽しそうすぎて……。  ほんと、やだ……。  何なのオマエもう、ほんとに。  ほんと勘弁して。    で、なんで、オレは、こんなのに、抵抗できないんだろう、ほんとにもう。  どーして、結局、いっつも啓介の好きな感じに、させられるんだか。  惚れた弱みとかいう言葉が頭をよぎるけど。  なんか、どれもこれもをそれで済ませるのもどうかと思ってしまうんだけど。  はー。もう。ほんとに。  啓介の顔を見つめて。  ん?と嬉しそうに笑われて、もいちど、ため息。    

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