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「ぐるぐる」

 翌朝。  一緒に家を出て、歩き始める。 「なあ、啓介?」 「ん?」 「昨日さぁ、今日一括な、とか話したけどさ」 「うん」 「……テスト勉強の間は、やめよ?」 「――――……」 「だってさ、寝不足んなるし。次の日の勉強にも影響でそうだし」  とりあえず、朝起きた時から気になってた事を、話す。  ――――……家の中で話すと、なんか迫られて流されそうなので、外に出てから話し始めてみた。 「どう思う……?」  オレが恐る恐る啓介を見上げながら、そう聞くと。  ふーん、という顔でオレを見ていた啓介が、まあええよ、とすぐ頷いてくれた。 「え、いいの?」  意外な答えに、ぱっと笑顔になってしまう。  なんだーこんなにすんなりオッケイくれるなら、外で言わなくても良かったじゃん。 「まあ勉強はしゃあないし。レポートとかもあるし。――――……昨日の一括っちゅうんは、延期でええよ」 「うん」  良かったー、ホクホクしていると。 「そこまで喜ばれると、納得いかんけど」  と、苦笑いの啓介。 「あ。ごめん。オッケイくれると思ってなかったから、つい」 「まあでもしゃあないやんか。勉強ちゃんとしたいっちゅーんを邪魔する訳にはいかんし」 「ありがと、啓介」  わーい、良かった。  ――――……別に、することがすごく嫌だとかじゃないんだけど。  ……疲れちゃうんだよねー、啓介が……うーん。……かなり……えーと。  ……激しすぎ、だから。……ってオレは何を考えてるんだ。  とにかく、テスト期間は、落ち着いて、勉強しようっと。 「一括は延期やけど……ちょっとは触ってもええ?」 「んー……うん。……いいよ」 「ええん?」 「少しなら……」 オレの言葉に、啓介は面白そうに笑う。 「ほな、すこし、な」 「少しだからな、すこし」 「ん、わーた」  笑ってる啓介に少し不安になるけど。もうしょうがない。  とりあえずテスト頑張ろ。  学校の駅に着くと、友達らに会う。 「おっはよー」 「あ、おはよ」  何となくばらけて、啓介が他の奴と前を歩き、オレも他の奴と話しながらその後ろを歩き出した。  いつも隣に居る事が多いから、後ろから見るのって、ちょっと新鮮。  ――――……何だろうなぁ。  後ろから見てても、なんか、カッコよさが分かるというか。  振り返っても、絶対カッコいいだろうなーと思うというか。  後ろ姿なんて、皆そんな変わらないと思うんだけど。  ……でも啓介のは、何か違って見える。  ……脚長いから? なんだろ。不思議。   「雅己 聞いてる?」 「あ、うん。聞いてるよ。レポートでしょ?」 「そう。昨日からやってるけど、全然終わる気がしない」 「うん、分かる。オレ、日曜からやり始めたけど」  そう言うと、そいつが、あ、と気付いたように声を出して、オレを見た。 「そういや、啓介と暮らし始めたんだろ?」 「あ……うん。そう。聞いてた?」 「雅己が引っ越ししてくるって、啓介が言ってた」 「うん。引っ越したよ」 「じゃあ一緒に勉強してんの? いいなー。あのレポート一人でやってるとうんざりしてくる」 「ていっても、別にレポートは別々でやってるから、関係ないけど」  クスクス笑いながら、平静を装って、答える。  ――――……仲いい友達と、一緒に暮らす。  皆、それ位しか思わないんだろうけど。  ちょっと、ドキドキしてしまうのは。  日々……何やら、甘々にイチャついて過ごしてるから、だよなぁ。  バレる訳は、ないのだけど。  前を歩いてる啓介の、楽しそうな声をちょっと聞きながら。  うーん、イチャついてとか。オレ何考えてんの。と、ぐるぐるしてくる。 

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