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「もやもやもや」

「え、同居始めたの?」  教室についても、引き続きその話題になってしまった。  高校からの友達も、大学からの友達も、今10人位。3列で適当に別れて座った時、急にそう聞いてきた奴が居て。 「何々?」 「誰が?」 「え? 雅己と啓介が?」  と皆が入ってきて、隣同士で座ってるオレと啓介を見つめる。 「オレと雅己2人で。先週末からや」 「何でー? 1人暮らし快適じゃん」 「行き来多かったし。一緒の方が楽やから」  啓介が、きっと、敢えてごくごく簡単に、答えてる。 「ふーん……まあでも、お前らって、高校ん時から、仲良かったもんな」 「逆に何で、最初から一緒に暮らさなかったんだって感じ」  そんな事まで言われて、一瞬なんて返そうかなと思うと、啓介が。 「少しは一人暮らし、してみたかったから、かなぁ? な、雅己」 「うん。……そんな感じ」  全く動じない啓介に、話を振られて、頷いて済ませる。 「ふーん。でもいいな、楽しそう」 「確かに」  ……お。なんか、良かった。この話、終わりそう。  と思ったら。  「えーでもさあ、せっかく一人暮らししてたのにさ、女の子とか、連れ込めないじゃん。オレは、同居するメリットより、そっちがやだなー」  1人がそんな事を言い出した。  そしたら周りも、確かにー、と騒ぎだす。 「特に啓介なんて、噂色々あったじゃん」 「いいの? 同居なんかしちゃって。不便じゃねえ?」  そんな風に啓介は聞かれて。  何て答えるのかなあと思っていたら。 「――――……ホテル行くからええし」  何の感情もなく口にして、皆、ああ……と、つまらなそうに納得。  ちょうどそこで、授業が始まって、話は終わりになった。  ……なんか。啓介って、全然動じねーし。  まあ動じられて怪しまれても嫌だし、オレが質問答えてるとなんかぼろが出そうだから、啓介が答えてくれてて、いいんだけど。  …………ホテル行くからいいとか。  ホテルとか。  ――――……ホテルか。    ……ふーん。  …………今まで行ってたのかなぁ……。  まあそりゃいってたよな。  ……だって行ってなかったら、どこですんのって話で。  ああ、自分ち……?  ――――……今のベッドでも、したことあんのかなあ。  ――――……って。  考えても仕方ないし、過去の事だし、今関係ない。  そう、思うけど。  なんかもやもやする。  いや、でも過去のこと。  過去の。 「……雅己」  不意に、隣の啓介が、こそっと名を呼んできた。 「……何」  気持ちを何も込めずに、言ったつもりだったのだけど。  オレの視線の先で、啓介が、ぴた、と止まって。苦笑い。  なんだよ、その苦笑い。  なんかオレの気持ち、諸々伝わってそうな気がして、なんか嫌だ。  すると。  啓介は、ふ、と優しく笑んで、オレに視線を流してくる。 「……後で話そな?」    なんとなく。全部分かってて、オレのどうしようもない、過去へのモヤモヤも気づいてて、んでもって、お前は可愛いなあ、とでもいつものように思ってそうで。  なんかむかつく。  むむむむ、と口が勝手に膨らんでいく気がする。  すると。隣で、堪えきれないというように、くす、と少しだけ笑う気配。  もーほんとむかつくんだけどーー!  なんなの、その余裕な感じっ。もうやだ。もうやだ!  啓介ってば、ほんとやだ。    

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