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「何これ?」

 2限が終わった所で、啓介に腕を掴まれた。 「雅己。昼、買いに行こ」 「う、ん」 「オレら用事あるから、またなぁ?」  皆に勝手にそう言って、啓介がオレを引っ張って歩き出す。 「買って、どっか空いてる教室で食べよ。何買いたい?」 「……お弁当」 「じゃあ2号館の下行こ」  かなりの早歩きで移動して、お弁当を購入。  そのまま、3階まで上がって、開いてる小さい教室に2人で入った。  隣で並んで。  袋からお弁当を机に出した。 「いただきます」  言いながら、お弁当の蓋を外して、割り箸を割る。  隣に座ってる啓介は、オレを見てて。  まだお弁当に触れない。 「食べねーの?」 「……オレな、色々考えとったんやけど」 「……うん」 「何を怒ってんのかなーって、さ」  ちら、と啓介を見ると、ふ、と笑いながら、オレの頬に触れてくる。 「食べてええよ」  ぷに、と頬を摘まんでから、そっと離される。  啓介は蓋を開けて、一口食べてから、オレを見て。 「ホテル行く言うたんが、ムカついた?」 「――――……」  ……まあ。それもあるけど。  モグモグモグ。 「せやけど、オレがほんまに女とホテル行くとか思うてはないよな?」 「――――……」  ……まあ、ない、とは思ってるけど。  パクパク。モグモグ。 「さっきは、雅己があんまり話続けたくなさそうやったから、切り上げるために言うたんやで?」 「――――……」  それも分かってるけど。  モグモグモグモグ。  そこで、啓介は、ぷ、と笑い出して。そっと手を伸ばして、オレの頬にぷに、と触れた。 「――――……昔の事で、怒っとる?」 「――――……」 「言ってもしゃあないから言わないけど、ムッとしとるんは、それ?」  ……なんか、全部言う通りで、悔しい。  自然と眉が寄って、啓介をジト目で見つめると。 「……それはなんや……んー。すまんとしか言えないけど」 「別に。謝ってほしいわけじゃないし」  パクパクモグモグ。 「……その頃オレ付き合ってないし。だから、関係ないのも分かってる」 「――――……関係なくはないて。ごめんな?」  よしよし、と撫でられると。なんか。自分が聞き分けない子供みたいで、腹立つ。 「今撫でんな」  ちょっと、その手から避ける。  分かってるし。  ……昔の事だし。別に浮気されたとかじゃないし。  別に啓介に清い体で居てほしかったとか、そん事思ってないし。……っつか、なんだ清い体って。アホなのか、オレ。何考えてんだ。もう。  モグモグモグモグモグモグ。 「――――……」  でもなんか。オレが行った事ないとこに。啓介が誰か知らない女と、そういう事する為だけに、そういうとこ行ってたって思うと。  ……過去の事でも、なんか、とってもモヤモヤするというか。  モグモグモグ。 「……雅己」    また頬に触れた啓介が、クスクス笑う。 「ずーっとモグモグしてんの、ちょっと止まって。可愛いけど」  よしよし、と頬、撫でられる。 「ホテル、行く? オレと」 「――――……」 「お前と行った事ないから。……お前と行ったとこ、て事にしたいかなとちょっと思うたんやけど」 「――――……」 「……あーでも勉強、するもんな。やっぱやめとくか」  オレが返事をする前に、そう言って退こうとした啓介に。 「行く」  ムッとしながら答えたオレ。  って。  やっぱり、馬鹿なんだろうか。 「――――……」  え、という顔でオレを見た後。  なんかすっごく優しい顔で笑んで。 「じゃあ、家帰ったら、バイク乗って、いこか?」  すり、と頬を撫でられる。  黙ったまま、頷くと、ん、と啓介が笑って、オレから手を離してお弁当を食べ始めた。  なんか、今のやりとりで、分かったこと。  ……他の奴と行ってて、オレと行ってないのが、嫌だった。みたい。    何これ。  どんな感情?? 変なの。オレ。 (2022/5/10) 一昨日のブログに短い会話SSあります♡

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