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「隠す」

「雅己さ、一回きいときたいんやけど」 「うん」  食べ終わったお弁当を片付けながら、啓介が言った。  頷いて、啓介に視線を向けると。 「オレとお前の事は――――……誰にも、バレたくない?」 「……」 「隠し通すつもり?」 「……啓介は?」 「オレはバラしても平気。せやけど、それは雅己の考えもあるから」 「…………いつか変わるかもしれないけど。まだいまは、内緒に、したい」 「ん、ええよ。親とかも?」 「うん。……もっとずっと、一緒に居て――――……いつか、親とかには、言ってもいいかも……」 「OK。わーた」  ふ、と笑って、啓介が頷く。 「ほしたら、誰にもばらさないように、うまくやろ」 「……いいの?」 「その代わり、多少、さっきみたいに女のこと言われた時は、話合わせて、適当に答えるからな?」 「……うん」 「お前も、ばらさないなら、うまく、適当に答えてええよ」 「適当に……」  ってオレに出来るだろうか。 「彼女長く作らんと、合コンとか、誘われるやろうし。まあ、あんまり頑なに断り続けても変やから、そこらへんも、適当に。お前と一緒に参加とかしとけばええやろし。隠すからには、適度にうまく、な?」 「――――……うん」  確かに。  そうかも。  思いながら頷くのだけど。 「…………でも、あんまり、仲良く、すんなよな」  は、と気付いた時には、勝手に漏れていた言葉。  あ。オレ、また今余計な事……。  思った時には、啓介は、オレを見つめて。そして、可笑しそうに、笑う。 「分かってる。雅己、めっちゃ妬くもんなぁ?」 「……っ妬かないけど」 「だいじょーぶ、心配なんてさせへんし」 「……っしないしっ」 「はいはい。ちゅーか、オレも妬くから。変に思われない程度にな?」  クスクス笑いながら、オレをヨシヨシしてくる啓介。 「だから撫でるなってば……もー」  抵抗すると、ますます笑われる。 「……あのさ、啓介」 「ん?」 「…………オレが隠したい、ていうの、嫌、じゃないの?」 「――――……はは。心配してくれるん?」  なんか愛おしそうに見つめられて。ちょっとドキッとしてしまう。 「心配っていうか……啓介は、バラしてもいいって言うのに、オレ、隠したいって……なんか嫌、かなって……」  啓介は、んー、と考えて。 「オレは、雅己がオレのって言いたいから、バラしてもええんやけど…… でも、色々考えると、メリットよりは、デメリットの方があるかも、とは思う」 「――――……」 「理解ある奴らばかりじゃないやろうし。――――……好奇の目で雅己が見られるのは嫌やなとも思うから、まあ――――……とりあえず、隠す、で正解やと思うてるよ」  黙って聞いてるオレを、啓介はよしよし、と撫でてから。 「気にせんでええよ。……別に一生隠しても、オレがお前好きなんは変わらないと思うし」 「――――……」  …………なんでそんなに、オレの事好きなの。一生とか、簡単に、言えちゃうのかな。  と。すごく不思議になりながら。目の前の啓介を、じっと見つめる。

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