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「オレのバカ…」
「ねー、啓介さ」
「うん?」
「オレの事、いつか好きじゃなくなるかもとか、そういう心配は無いの?」
「無いけど?」
けろっとして、そう答える。
「……何で?」
「何でって、言われると……」
苦笑いしつつ。
「もう18年生きて来てるやろ、オレ」
「……オレもだけどね」
「ん。せやな」
クスクス笑って、啓介が頷いて。
「そん中で、オレ、お前より好きな奴、居ないし」
「……来年もっと好きな奴に会うかもよ?」
「今まで生きてきて、ダントツで、お前の事好きやのに?」
「――――……」
「いきなり来た奴を、お前より好きになると思う?」
「……啓介ってさ、オレの見た目、好きなの?」
「――――……好きやないと思うてんの?」
「……好きじゃないとまでは思わないけど……んー……もっともっと、好みどまんなかの人がさ、居たら? ……女の子で」
最後、ぼそっと付け加えて言ったら。
最後の言葉に、ぴく、と反応してオレを見て。
伸びてきた手に、頬をぶに、と引き延ばされた。
「最後のなんやねん」
「……いや、だって……」
「まだ言うねんな、それ。――――……雅己が、女がエエと思うてるってことなん?」
「え」
いや。……そうじゃない。
ぷるぷると首を振ると。
「……言うてないっけ? オレ、転校して、初めて会った時から、お前の事好きやけど」
「――――……そうなの?」
「……そもそも好きやなかったら、クラスちゃう奴とあんなに絡まんし」
「――――……」
「最初はそういう意味ではなかったけど……ずっと好きやけど。4年目か。ずーっと一緒に居って、ずーっと好きで、今やっと、家に引き込んだっちゅーのに。来年、多少好みの顔が来た言うて、お前から離れると思う?」
「――――……」
「オレ、これっぽっちも思わんけど」
言いながら、啓介は、オレを引き寄せて。
キスされた。
「――――……オレ、めーっちゃ、しつこいから。離れへんよ?」
「…………」
……そうだった。しつこい。
好きなバスケの選手もずーっと同じ人好きだったっけ……。
「諦めな」
クスクス笑って、啓介がまた、キスしてくる。
――――……諦めなって。
……別に、それ。
オレにとって、嫌な事じゃないから。「諦める」とかじゃないけどな。
「オレ、ずっとお前と居たら、雅己の事、今よりもっと、好きやと思うし」
「……」
「好きな奴と、ずーっと一緒に居るんやで? 好きにきまっとるやん」
「――――……その理屈で言ったら、離婚する奴とか、居ないと思うけど」
「……ん?」
「だってもとは好きで結婚して、でも、別れる人たちは別れるんじゃん?」
オレがそう言うと、啓介は、はー、とため息をついてみせて。
「――――……オレがどんだけ雅己好きやと思うてんの?」
「……わかんないけど……」
「心配なのは、お前がオレを嫌いになったら困るなーてとこやけど……」
「――――……」
「……今、オレの事好き?」
「……うん。まあ……好き」
「まあとか言うなや」
啓介は面白そうに苦笑い。
「雅己は、オレが今のままなら、ずっと好き?」
「……うん」
「ほしたら、平気なんやない? ずっと一緒に居るってことで」
うんうん、と、啓介は頷いてる。
もう。――――……ここまで自信満々に言い切られると、笑ってしまう。
「なんなのもう。啓介」
「ん?――――…… 機嫌直った?」
「機嫌て?」
聞き返してから、ああ、そっか。オレが怒ってたからここに居るんだった。
呆れたように笑ってる啓介に。
「うん」
と笑う。
「授業終わったら、ホテルな?」
「――――……」
…… …… ……。
あ。そうでした。
………あれ。なんか、考えると。
……………オレってば自分から誘ったかのような……。
うーんうーんうーん……? 何してんの、オレってば。
今更取り消しきかないよなあ、なんて。
啓介をちら、と見ると。啓介は、ご機嫌だし。
ああ、オレの馬鹿。
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