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「男としては」

 何か、昼休み、啓介と色々変?な話をして終わった。  で、次の時間は、啓介とは別の授業。  最後に軽いキスだけして、別れた。  教室に入ると、「雅己―」と呼ばれた。 「あ、浩平」 「やほー」  |飯田 浩平《いいだ こうへい》は高校のバスケ部の仲間。  学部違うけど、この一般教養の授業だけ一緒。 「あれ、なんか浩平、久しぶり」  言いながら隣に座る。 「先週休んだ、この授業」 「あ、そっか。ノートいる?」 「あとで写メして?」 「ん、いいよ」  頷きながら、授業の用意をしていると。 「こないだバスケ、楽しかったよなー」  浩平が思い出したように言った。 「うん。楽しかったね」 「皆とご飯食べにいったのも久々だったもんな」 「そうだねーテスト終わったらまたやろうよ」 「そうだな」 「なんか運動してないと、体、なまるよね。こないだちょっとゲームしただけて結構ばてた」 「つか、雅己は、最大限で走ってたからじゃねえ?」 「――――……そうだっけ?」 「そうだよ。お前と同じチームの奴ら、皆倒れてたじゃん」  思い出し笑いを浮かべてる浩平に、そうだっけ、と言いながら。 「ちょくちょく集まれたらいいよな~?」  そう言って、笑っていると。   「そーいえば、啓介にさ」 「ん?」 「相変わらず若菜がはりついてたよな」 「……あー。そう、だね」  その事がきっかけで、ちょっぴりその後、色々あった事を思い出す。 「まだ好きなのかねー、啓介の事」 「……そうかもね」  まあ、卒業してからまだそこまで経ってないし。  オレと、啓介の関係は、結構変わってるけど。  好きな気持ちとかは。……そんなに急には変わらないのかもしれない。 「そういえばお前も、沙希に告白されたって?」 「……告白??」 「来年付き合って下さいって」 「ああ……受験が終わった時にオレがフリーだったらって言ってたやつ?」 「そうそそう」 「……あれは冗談でしょ」  クスクス笑って言うと。 「お前の事好きなのはほんとだと思うよ。なんかそんな噂、高校ん時も聞いた事あるし」 「んー? でも、受験までは無理とか、フリーだったらとか。本気じゃないよ」  そう言うと、浩平も笑う。 「まあ、確かに面白い告白だけど。――――……ほんとにそん時告白してきたら、どーすんの?」 「どーするって…… 冗談なのにそんなのわざわざ考えないけど」  ふふ、と笑ってスルーしてると。 「なあなあ、雅己ってさ――――……童貞?」 「――――……」  …………………………。  ドウテイ。…………ドーテー……??  固まってたら。 「あ、やっぱりそうだよな。彼女居た事ないもんな」 「――――……」 「ていうか、オレもなんだよね。早く彼女作って、脱しような! オレ今さー良いと思ってる子がいてさー」  と、浩平が延々続ける。  教授が入ってきて、会話が終わるまで、うんうん、と適当に相槌を打っていたのだけれど。  授業が始まると同時に。  突然突き付けられた事に、ん?と、思考停止。  そっか。  ――――……エロイ事、さんざんして、経験ある気でいたけど。  そういえば、そっち、使った事ないじゃんね、オレ。  そうか、それだと、「ドーテイ」ってなるのか!!  ……あんなにエロイこと、いっぱいされてるのに??  なんだか、その響きに、全く納得がいかない、オレ。  経験ない。って。  なるのか。男としては。  ………………。  ――――……。  えーと。  …………今までそれに思い当たらなかったオレがバカなのか。  でもそうか。そうだよね。確かに、そうなんだよね。  やだな。ドーテイという、その響き。  …………啓介。  何だか、何を話していいかよく分かんないけど、啓介の所に行きたいぞ。  んーーんーーー…………。  うーーーーん。   (2022/5/16) ……(笑)

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