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「ブレない」

「大阪でさぁ……そういえば、誰に会ったの?」 「中学まで一緒だった奴ら。小学校から一緒の奴が多いんよ」 「幼馴染?」 「まあ、そやな。結構いっぱい居るけど」  ふーん、と頷く。 「関西弁の友達と、わーわー話してる啓介は、なんかちょっと違う風に感じるかも」 「……そう?」 「うん。居ないじゃん、こっちに、関西弁で話す奴」 「まあ、そやな」 「電話越しに聞こえたのも、ちょっと不思議だった」 「そぉか……」  クスッと笑いながら、腕枕しているオレの顎に触れてくる。  啓介の方を向かされて、視線が合う。 「それって、いやなん?」 「ん?」 「違う風に感じるって」 「嫌ではないけど……ちょっと遠くは感じるかなあ? なんかお前のホームは向こうかなーって気がするから」 「――――……ホーム、なぁ……?」  うーん、と少し考えてる啓介が、ふ、と笑って、オレの頬に触れる。 「オレ、大阪に居ったけど、こっちに帰りたくてしょうがなかったんやけど?」 「……」 「てことは、こっちがホームなんやない?」 「――――……そうなの?」 「帰るとこが、ホームやろ?」  まあ……そう言われてみれば、そうかな? 「まあ、皆が関西弁ちゅーのが久々やったし、楽しかったは楽しかったけどなぁ?」 「うん。なんか分かる」 「でも、オレ、雅己と居れたらそれでいいけど」 「――――……」 「雅己だけ居たら、とかは言うたら重いから言わんけど――――……まあもちろん、他の奴といるのも楽しいけどな」 「……うん。まあ……。わかる」 「……わかる? 何が?」  啓介が、クスクス笑いながら、聞いてくる。 「啓介が他の奴といるのも好きなこと」 「ぁ、そっち?」 「……あと、オレと居れたらって言ってくれてることも……分かってる」  「――――……ん。分かっとって。むしろ、雅己が一番、やから」  そんなことを言いながら、ちゅ、と頬にキスしてくる。 「……こんなこと、して、ずっと一緒に居るんだからさ。……もうわかってるよ」 「ん。なら、良かった」  言うと、啓介はオレを引き寄せて、腕の中に、抱き締める。 「雅己」 「ん?」 「――――……一人で、昨日、寂しかった?」 「……」 「ここで寝たんやろ?」 「――――……うん。まあまあ。……寂しかったかなあ……」  あんまりにも、寂しかったと言い切ると、たった一晩なのにバカみたいな気がするので、そんな風に言ってみたら、啓介は、またクスクス笑った。 「……オレは、めーっちゃ寂しかった」 「――――……」 「いっつも抱いて寝てるのが居ないだけで、こんなんなるんやなーって思うたし……オレは遠距離とか、絶対無理やなって思った」 「――――……遠距離にしたら別れるってこと?」 「ちゃうわ。あほか」  即答で笑った後。 「どっちかが何かをやめてでも移動するか、中間で一緒に住むか、とにかく、遠距離っちゅう状態は、無くすと思うっちゅーこと」 「……あ、なるほど……」 「別れる訳ないやん」  ……なんかほんと。  一ミリもブレないな。啓介って。  と、笑ってしまう。  

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