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「過保護」

 バーベキュー久しぶりだし、部活の皆も久しぶりだし。  先輩たちはちょっと失礼だったけど、やっぱり皆と騒ぐのは楽しい。  高校三年間、放課後も土日も含めて仲良かった皆だもんな。  ほんと、楽しいな。 「雅己食ってる?」  隣に孝先輩がやってきた。 「もうおなかいっぱい……っていうか、先輩、さっきお酒飲んでませんでした?」 「最初に一杯だけな」 「バスケ、出来ます?」 「バスケすんの二時間後位だろ? 全然平気」 「倒れないでくださいね」  クスクス笑いながらそう言うと、先輩は苦笑い。 「倒れねえよ」 「先輩、お酒強いです?」 「んー、て言っても、五月に飲み始めたばっかだからな」 「あ、誕生日五月……でももう二か月ですねー。いいな、オレも早く飲んでみたいな」 「飲めるようになったら一緒に飲む?」 「おごりですか?」  ふふ、と笑って言うと、いいよ、と笑われれる。 「やった」 「雅己は弱そうな気がする」 「そうですか? うちの父さん、弱いけど……遺伝するのかな」 「するかもな? 一族皆下戸の家とか聞くし」 「どうだろー、飲んでみないと分かんないですよね」  そんな話をしてると、要が隣で笑い出した。 「まあ雅己は、啓介がいるとこで、飲んだ方がよさそうだよな」 「え、そう?」 「すっごい酔っ払ったりしたら、絶対啓介に怒られるぞ、お前」 「…………」  否定できない。何かよくわからないけど、怒られそうな気がする。  ……心配して、だろうけど。 「オレが何や?」  色々回って戻ってきた啓介が、オレの隣でそう聞いてくる。 「……オレが酔っ払ったら、啓介に怒られそうって要が」 「別に怒らんけど……」 「あ、ほんと?」 「そんな阿保みたいに飲ませんし」  あ、そういうことね。啓介らしいけど。  苦笑いで、はいはい、と言っていたら。隣で孝先輩が苦笑い。 「啓介って昔からそうだったけど、雅己の母親みたいだな?」 「……母親」  思わずそのまま口にしてから、啓介を見てしまう。 「過保護に磨きがかかってねえか? 雅己、男なんだから、ちょっとは無理しても平気だろ?」 「……まあ。そう、ですよね」  とりあえず、細かいこと考えず、あはは、と笑って返すと、要が横でクスクス笑いながら。 「でも孝先輩も、雅己甘やかしますよね? つか、雅己は大体甘やかされて生きてるからなー」 「……んなことないけど。どーいうこと、甘やかされて生きてるって」 「あれ? 自覚ない?」  ぷ、と要に笑われて、眉を顰めてると。 「まー確かに雅己ってそういうタイプだけど……啓介、ちょっと過保護すぎないか?」 「……んなことないですよ」  あ。……笑って答えてはいるけど。  ちょっと啓介、内心ムッとしてる、かなあ?  多分誰にも分かんないと思うけど。  ……まあでも、啓介は、過保護だよな。うんうん。そんな気がする。  オレ別に、か弱い可愛い女の子とかじゃないからな。そこまでじゃなくても平気なんだけど。

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