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木村勝編5-4 ※輪姦

 他のスタッフ達によって尻と床を清められても、勝は溜まっていたものをすっきりとひり出した解放感からほとんど放心状態であった。  激しく息を乱し、糞尿の次は涙と鼻水を垂れ流しながら、ふっとその弱った心を露わにした。 (俺……悪くない……よなぁっ……? だって、俺が悪いなら……あいつらも、こうならなきゃおかしいだろっ……。なんで俺だけがこんな目に遭うんだよ……っ。不公平にも、ほどがあるっ……) 「勝。いつまでも被害者ヅラをするな。お前が菅沼のように哀れな学生だったのはもう八年も前のことだろう」 「え…………?」  勝がよろよろと神嶽を見上げる。クラブの者はみな勝の出生から現在に至るまでの過程を知っているため、神嶽の言葉に驚いたのは彼だけだ。 (な、なんだ……? 今、学園長、俺の考えてることにそのまま返事したような……) 「菅沼のようにって……う、嘘……だろっ……そ、そんなことっ……なんで、あんたが知って……」  今の今まで誰にも話したことのない過去を突き付けられ、勝が震えだす。  勝は甲子園球児であった際、絶対的なエース投手として母校を優勝へ導いた。  だが、その端正な顔立ちや親しみやすい態度から、世間は彼をまるでアイドルかなにかのように騒ぎ立てたのである。  大学へ進学してからもその人気は上がる一方で、練習には多くのファンやマスコミが詰め掛けた。  その中で、やがて野球部内に生まれた醜い嫉妬。  勝が、実力も、人から愛される魅力も、誰よりも秀でていた。それだけだ。  たった“それだけ”で勝はいじめの標的にされてしまった。  それまで挫折を知らなかった勝は来る日も来る日も自身を否定されるような正に地獄の一年を味わい、二年に上がると、遂に何もかも耐え切れなくなって、順風満帆だったはずの野球を辞めてしまった。  元々教育学部に属していた勝は、プロの道より、そんな選手を育成する立場の人間になりたいと、周囲に教師を目指す夢を語っていたという。  だが、勝の場合はそれだけでは終わらなかったのだ。大学を卒業後、念願叶い体育教師として地元の公立校に就職した勝は、そこで現在と同じような生徒いじめを始めた。 「俺に嘘を付けると思うな、勝。俺は、お前の全てを知っている」 「っ…………! うぁ、あぁぁぁ……」 (学園長……全部……知ってたんだ……知ってて、俺をこんな目にっ……)  当時の勝は何事にも全力投球で生き、それ故に時たま周りのことが見えなくなってしまう、実に熱心な少年だと評判だった。しかしその愚直な部分を、心ない者達によって歪められてしまった。  もう二度と虐げられたくない。否定されたくない。  その為には自分が高みに立てばいい──勝がしているのは、教育者という強い立場を利用した見当違いの復讐劇。  屈折した彼の心には、過去の傷を凌駕する絶対的な支配者が必要だ。 「愚かな指導者の元では、愚かな人間しか生まれない」  神嶽の口から紡がれるのは、勝が最も恐れる言葉。 「一から教えてやろう。勝、お前は貶められるべき存在だ」 「ち……違っ……! ぁぐうっ!?」  勝の顔の前に立った蓮見が片手で髪を引っ張り上げた。ぐしゃぐしゃになった顔にすっかり膨張した肉棒を押し付ける。 「先生、意地張ってられるのも今のうちだぜ。そのうち自分からもっといじめてくださいって泣き叫ぶようになる」 「ひぅ……う、ううぐ……」 「ほら、口開けて。とっとと咥えるんだよ。俺にも歯立てたら承知しねえぞ」  蓮見はわざと語気を強め、勝の下肢の間でだらしなく垂れ下がっている睾丸を足の甲で掬ってみせた。  ふにふにと転がすように優しく撫でるが、いつ踏み付けても不思議ではない仕草である。 (いじめ……られたくなんかっ……ない……! でも、今は……ううっ……こいつらの言うこと……聞くしか……)  蓮見がこの場の誰より体格に恵まれていたこともあって、勝は更なる暴力に怯え、諦めたように口を開いてみせる。  張り出したカリが唇に触れると、少し迷ったのち自らぱくりと咥えていった。 「むっ、ふうっ、うぐっ、ぐぐぅ……っ」 「そうそう、素直にやりゃあいいんだよ」  大人しくなった勝に、蓮見は満足げに笑って自らの快感だけを求めて頭を揺さぶり始めた。  いきなり喉の深くまで突き入れられて、勝はまた噛んでしまいそうになるのをすんでのところで押しとどまる。  ここで反抗すれば今度こそただでは済まないと、先の責め苦で十分にわかっていた。

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