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木村勝編6-1

 クラブでの凌辱から一日。  勝は疲れた身体をなんとか奮い立たせて普段通りに仕事を終えたが、やはり神嶽には学園長室へ来るように命令されていた。  入室しても勝は神嶽の顔をうまく見ることができない。その目は落ち着かなそうに泳いでいて、今回ばかりは怯えの表情を浮かばせていた。  無理もない。記憶に新しいあの恐怖と屈辱を、到底忘れることは出来ないだろう。  勝は緊張した様子で神嶽の前までやって来ると、指の関節が白くなるほど強く拳を握り締めた──が、すぐに諦めたように力を緩めた。  そうしてその場に両膝を付くと、絨毯に頭を擦り付ける勢いで土下座をした。 「何の真似だ」 「おっ……俺が、悪かったぁ……っ! もう、いじめなんてしないっ……あ、あんたに脅されてから、一度も書き込んでないしっ……! これからは真っ当に生きるっ! あんたにされたことも絶対に口外しないって、約束するよっ! だから……なあ……もう……あんなことは、やめにしてくれ……頼む……この通りだからっ……!」  今更ながらに自身の行いを悔いてももう遅い。  神嶽に犯され、クラブの存在まで知った以上、勝に残されているのは奴隷として堕ちる道だけだ。  プライドの欠片もない情けないその姿をしばし見つめ、神嶽は口を開いた。 「勝」 「は、はいっ!」  さすがの神嶽にも、こうしてきちんと謝罪すれば誠意は伝わっただろうと、勝は期待に満ちた顔を上げる。 「言っただろう、お前には再教育が必要だ、と。やめるつもりは更々ない」  良心の呵責もない神嶽に、勝はあんぐりと口を開ける。  不安げだった顔が一転、みるみるうちに怒りに染まっていき、今日一日、勝の頭の中を埋め尽くしていた激情が遂に爆発した。 「っ…………ふ、ふっざけんなよてめえっ!! 出るとこ出たら困るのはあんただろうがっ! お……俺は確かにもう教師としてはやっていけねぇのかもしれねぇけどっ……あんたは脅迫に暴行に、あんなヤバそうな場所にまで出入りしてっ……! 俺にしてることがばれたら、それこそ人生終わりだぜっ……!」  すっかり大人しくなったかと思えば、またこれだ。  今度は自分が神嶽の弱みを握ったような気になって、勝は狂気じみた顔で口角を歪めている。こう調子に乗りやすいところも指導の対象だろう。  神嶽は一切の表情を変えない。そんな勝の髪を鷲掴みにして、ゆっくりと顔を寄せた。 「そうなる前にお前を黙らせれば良いだけの話だ」 「……ひ……ひ、ぃッ……」 (あ……俺……なんてこと口走って……こ、こいつは、あんな……人を人とも思わないような奴らの中で、平気な顔してたんだぞっ……。こ、殺されるっ……!?)  囁かれた言葉に恐ろしげなものを感じ、勝は背筋が凍りそうになる。 「お前にはこれから、あの施設、地下クラブで性奴隷として男に奉仕できるよう、本格的に調教を受けてもらう」 「な、なにがどうなったら俺がそんなの受けなきゃならねぇことになんだよっ……!? 意味わかんねぇんだよっ……あんた……エロサイトの見過ぎじゃねぇの……」  そう強がってはみるが、声の震えは隠せていない。  所在不明の無法地帯、そこに蔓延る無法者、それらに命令を出せる立場にいた神嶽ならば、その言葉はただの脅しではないと勝に予感させる。 「これは決定事項だ。手始めに今日はお前の肛門を拡張してやる」 「かっ……拡……張……!?」 「いつまでも立場を理解しない物覚えの悪い奴隷への仕置きには、ちょうど良かったな」  勝は慌てて逃げようとするも、この距離では神嶽がその腕をがっしりと掴む方が早い。 「うわっ……や、やめろっ! やめてく……ぁうっ!」  神嶽はそのまま勝を強引にデスクに引き倒した。下を脱がせ、自分で両脚を抱えるように指示する。  それでもなかなか動きを見せないが、神嶽が軽く尻を叩いてやると、勝は激しい羞恥心に苛まれながらも、目の前の男に全てさらけ出すようにゆっくり脚を開いていった。  恥ずかしい格好を強要させられ、それをまじまじと見られることはそう簡単に慣れるはずもなく、勝は耳まで真っ赤にして俯いている。 「さて、まずは────」  視界の隅に神嶽が引き出しから取り出した道具が映り、勝はギョッと目を剥いて顔を上げた。 「あ……ま、待ってくれぇっ! か、か、浣腸は……もう……」 (し、してきたんだよぉっ……。だってそうだろっ……あんな……人前で無理やり出させられるなんて、嫌に決まってる……!) 「そうか、してきたか。準備万端という訳だな。お前にしては良い心掛けだ」 「っ……う、うぅっ……好きで、やってるんじゃない……もう、あんな目に遭いたくねぇんだよっ……」 (本当に……何なんだよこいつっ……俺の考えがわかるみたいな態度とりやがって……気味わりぃんだよ……)  異能力など到底信じない勝にとっては、神嶽が本当に己の思考を掌握しているとは夢にも思わないだろう。  協力的なことをすれば認めてやる必要はある。それが理不尽に否定され続けてきた勝の心を溶かす鍵でもあるからだ。  神嶽は疲れからか普段より手入れがなっていない彼の短髪を撫でてやった。

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