仕事とプレイによる睡眠不足とストレスでどうにかなりそうな週末、また託に呼ばれた。 　いつものようにプレイの途中でお仕置きが始まり、鞭ではたかれた時、体が震えた。 　一体自分は何をやっているんだろうと思った。突然果てしなく深い思考の闇に囚われた。 　目の前にいるDomが、託という個人の認識ではなくなり、この主人は自分を一生褒めてくれないのだと悟った。 「ああああっ」 　その場でうなだれ、うずくまる自分を止められなかった。 「どうかしたの？」 　託の表情が変わったのを僕は上の空で眺めていた。 　そして、ぐにゃりと体ごと崩れ落ちる自分を自覚した。意識はかろうじてあったけど、自分がそこにいる感覚がしない。目の前に霧がかかったように何も見えない。 「鈴也？」 　どこかで僕を呼ぶ声がする。ここはどこだろう。 　なんか悲しいことがあった気がするけど、思い出せない。 「うううっ」 　息苦しくて、つい声をあげてしまった。 「鈴也」 　呼ばれて、反射的に謝る。 「申し訳ございません」 　僕は悪いことをしたのだから、謝らないといけない。それだけが頭にあった。 「ドロップしたの？」 　目の前の人物が誰かも思い出せない。ドロップって何だっけ？ 　とにかく謝らないといけないと思い、「ごめんなさい」と繰り返した。 　自分の体が揺れて、どこかに運ばれたんだと気付いた。 「眠ってていいから」 　その声がどこから聞こえているのかもわからない。目をつぶるとどこまでも真っ暗闇だった。